ガイドリングについて考察してみよう。
ガイドリング素材の説明と考察
富士工業から販売されているガイドリングの種類は通常3つあるが、海外の通販サイトを除けば日本未発売のガイドリングが複数ある事に気づく。
せっかくなので、それぞれの特徴などを解説する。

ガイドリングの概要
ガイドリングの種類は大きく分けて4種類でその概要は以下。
①トルザイト ・・現在最も高価なガイドリング。軽さが一番の特徴、高級ロッドに搭載されている。
②SiC ・・昔からあるが、性能だけで言えば最も良いガイドリング、多くのロッドに採用されている。
③SiNⅡ、ALCONITE、FaZLite ・・廉価版のガイドリング3種類、海外でのみ販売されている。
④Oリング ・・廉価版のガイドリング、日本ではこれが最も安いガイドリング。
それぞれのガイドリングの詳細な仕様があったので解説。

ガイドリングの指標解説
硬度
単純な素材の硬さ、高いほど変形しにくく、傷つきにくい。
よくPE使用でゴールドサーメットのガイドリングは削れるというが、この数値が高ければ問題が起きない。
PEを使用した際に、PEに石英が付着しそれが原因でガイドリングが削れる。尚、石英の硬度は8.6〜11Gpaなので、上記のガイドリングでは削れる事は無い。
ガイドリングの種類で見ると、Sicのみが飛びぬけて硬い。
それ以外のリングの硬度は同じぐらいの硬度となっている。
比重
素材の重さ、数値が低いほど軽い。
単純な比重よりも、使用する素材の量がロッドバランスに影響する。
ガイドリングの種類で見ると、トルザイト、SiC、SiNⅡが軽い。次いでFazliteとOリング、ALCONITEが一番重い。
TORZAITEが素材使用量が最も少ない為、ガイドリングの中では最軽量となる。
熱伝導率
熱の伝わりやすさを示す指標。高いほど熱が伝わりやすい。
ロッドの性能的には放熱効果が期待できる。
ラインとガイドリングの摩擦が発生した際に、熱がすぐに逃げることにより、ラインへのダメージを防ぐ。
ガイドリングの種類で見るとSiCがダントツに高い。次いでトルザイト、SiNⅡ、FazLite、Oリング、ALCONITEの順。
ちなみに空気は0.0241で水は0.561-0.673、熱を持った物質は空気中では冷めにくい、水に入れると冷めるが、熱伝導率はこの程度。
曲げ強度
物質が破断するまでの強さ。両端を固定し、中央に荷重をかけた時の破壊強さを指す。素材の加工のし易さもこの数値に影響する。
ガイドリング考察
トルザイト
トルザイトリングは現在、最もハイスペックなガイドリングとして富士工業のフラッグシップモデルになっているガイドリングで、従来のsicと比べて薄い、軽い、表面が滑らか、と言った特徴を持っている。
実際のスペックを見ると、ほとんどの指標がSiCリングの性能が上であるが、曲げ強度のみトルザイトが2倍ほど良い指標となっている。
曲げ強度が高い為、薄く加工でき、他のガイドリングとはリングの形状が異なる。
その結果、ラインとの接点の増加、薄さ=軽さの確保が出来ており、最もハイスペックなガイドリングとなっている。
下の画像を見ると、明らかにリングが薄い事が分かる。
この効果はかなりあり、リングサイズが同じでもリングの内径が広い為、ガイドのサイズを落とす事が出来、さらに軽量化が可能となる。
※現在のSiCのガイドリングはS型となっており、J型よりも薄い形状となっている。
比較に使われているリングは現在より大きいので注意


仕様の数値だけ見ると、SiCリングの放熱性能がトルザイトリングの2倍ほどあり、良さそうに見えるが、リングのライン接地面の形状が異なる為、実際にはトルザイトリングの方がラインへのダメージが低い。


結論としては、他のガイドリングに対して最も性能が高いガイドリングと言える。
そもそもガイドリングの形状が違う為、このガイドリングだけは別物と捉える必要がある。
またこのガイドリングが使用されるガイドフレームはチタンフレームのみとなっており、選択肢が少ない。
SiC(Silicon Carbide)
日本ではガイドリングと言えばSiCリングと、普通に中価格帯のロッドを購入すると標準で搭載されているガイドリング。40年も前からあるガイドリングなので、何も気にしていなかったが、実際に複数のガイドリングを比較すると、非常に高性能な事が分かる。

ガイドリングの形状は2種類あり、J型とS型がある。
下図のリングタイプ欄にSとJの表記がある。

J型は昔の形状で、現在はより薄くなったS型に置き換わっている。

現在購入するガイドは大体S型になっている。
ガイドリングの性能に戻ると、他のガイドリングと比較してもダントツの高性能となっている。
日本で普通に手に入るので、通常時はこのガイドリングを使用していれば全く問題は無い。
また、このガイドリングの特徴として、チタンフレーム、ステンレスフレームと選択肢があり、ガイドセットの値段など、お財布によって使い分ける事が出来る。
特に値段が違うのが大口径のガイドで、フレームの素材で数倍の違いがある。
結論としては、普通にビルドする分においては、SiCで間違いは無い。尚チタンフレームを選択する場合、トルザイトと比較して値段差がそこまで無いので、トルザイトを選択した方が良いかもしれない。
ステンレスは非常に安いので、価格を抑えるならステンレスSiCが良い。


廉価版ガイドについて
ここからが問題の廉価版ガイドリング。
上記のトルザイト、SiCは性能においては問題が無いが、値段が高いので、価格を押さえたい時に、他のガイドリングは使い物になるのか?という所を考察しようと思う。
尚、海外専売モデルのは情報が少ない
参考価格としてステンレスのSicガイドセット。
ステンレスのガイドセットは種類が少ない。
値段は定価ベースで4,300円と4,600円。※2025/6/26時点でamazonでは値引きなし。

性能面でのおさらい

SiNⅡ(Silicon Nitride II)
性能面ではSiCに次ぐ性能となっている。
・硬度はどのリングも大差は無い。
・比重は4つのリングの中では最も軽い。
・熱伝導率も4つのリングの中では最も良い。
・曲げ強度も4つのリングの中では最も良い。
と言う事で、性能面だけ見ればSiCにかなり近い性能となっている。
性能面だけを見ると非常に良さそうなガイドであるが、一般的なガイドには採用されておらず、Heavy Dutyシリーズのガイドにのみ採用されている。

同じガイドでSiNⅡとSiCがあったので比較。
SiNⅡが5.59USD、SiCが8.25USDと言う事で、SiCの廉価版と言う位置づけ。


廉価版のガイドであるが、採用されているガイドが少ないのと、セットでの販売はされていない。
あえて海外通販を使用してこのガイドで揃えるのは微妙である為、Heavy Dutyな用途には普通にSiCを選んだ方が良い。
ALCONITE
性能面では良い所が無いガイドリング。
日本の市販ロッドにも採用されている事から、Oリングよりも高性能と言うイメージがあったが、実体はOリングの方が高性能。
・硬度はどのリングも大差は無い。
・比重は4つのリングの中では最も重い。
・熱伝導率も4つのリングの中では最も悪い。
・曲げ強度は4つのリングの中では2番目に良いが誤差の範疇。
と言う事で、性能面では最も悪いガイドリング。
曲げ強度のみ4つの中では上位であるが、リングの形状がどのリングも同じ為、あまり関係がない。
海外の通販サイトで値段を見ても特段安くは無いので、あえて選ぶ必要は無いガイドリング。

FaZLite
性能面ではOリングの上位版と言った感じの性能。
このガイドリングだけ、青み掛かった色をしているのが最大の特徴。
・硬度はどのリングも大差は無い。
・比重はOリングと同じ比重。
・熱伝導率も4つのリングの中では2番目に良い。
・曲げ強度は4つのリングの中では2番目に悪いが誤差の範疇。
性能面では割と良いガイドリング。
Oリングが結構高性能で、それよりもさらに高性能なガイドリングと言う位置づけ。
ガイドに色が付いているので、それを目当てにするのも良いかもしれない。
値段も安いので、結構アリなガイドリングかもしれない。

“O” Ring
性能面を見ると結構良いガイドリング、性能面はアルコナイトの上位で、Fazliteより少し下の位置づけ。
・硬度はどのリングも大差は無い。
・比重はFazLiteと同じ比重。
・熱伝導率はAlconiteよりは上の性能。
・曲げ強度は4つのリングの中では最も悪い。
イメージでは性能面が悪そうだが、実際の性能は廉価版ガイドの中ではそんなに差が無く、アルコナイトよりは上の性能。
ただし、同じガイドリングの型(S型)でもSiCやアルコナイトと比べると、内径が少し狭くなっており、若干糸抜けが悪い。※アルコナイトとの差は誤差範囲

Oリングのガイドセットは以下の2種類のみ販売されている。
ガイドの形状はいずれも旧世代の形状である点が注意。ただし、値段は非常に安い。
Amazonを覗いたが、このガイドセットは販売されていなかった。

Oリングのガイドは、カタログ上採用されているガイドが少なく、明らかに廉価ガイドのような印象を受けるが、海外の通販サイトでは、日本のカタログには無いOリングのKガイドが販売されている。
性能面で廉価版ガイドの性能差があまり無いので、Kガイドが選べるのであれば、採用しても良いと思えるガイドリング。


廉価版ガイドリング価格比較
海外の釣り具サイトのMod holeに同じガイドでガイドリングを選べるものがあったので価格を比較する。
ガイドはKWガイドの12番サイズで比較。
Alconite 3.79USD
Oリング 1.80USD
fazlite 2.79USD
SiC 7.15USD
SiCが高いのは分かるが、他のガイドリングは性能に比例していない価格となっている。
アメリカでは定価と言うものが存在せず、言い値で価格を付けれるので、アルコナイトガイドはイメージ戦略で価格を吊り上げている可能性がある。
他の可能性としては、ガイドリングの表面加工が優れている可能性もあるが、それは情報が無いので検証不可。
Alconite

Oリング

fazlite

SiC

廉価版ガイドリングの結論
AliExpressで廉価版のガイドが普通に手に入るので、コストを抑えたロッド作成において、廉価版ガイドは積極的に選択するに値するガイドリングとなっている。
どのガイドリングを選択するかは、OリングとFazLiteの2択で、価格差がそこまで無いのでFaZLiteを選択するのが良いと思う。