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なぜTip CutでIPは上がるのにAAは下がる?CCSで見るブランク切断の仕組み

ブランクス

前回の記事では、Rodhouseが同一仕様のブランクをTip側とButt側から段階的に切断し、そのたびにCCSを測定した実験を紹介しました。

結果を簡単に振り返ると、

加工IPAA
Tip Cut上昇低下
Butt Cut低下低下

というものでした。

特に興味深いのがTip Cutです。

柔らかい先端部分を切ればティップは硬くなります。

実際、CCSのIPも上昇しました。

ところがActionを示すAAは逆に低下しています。

硬くなったのに、CCS上ではFastになるどころか、よりProgressiveな方向へ変化した。

一見すると分かりにくい結果ですが、CCSが何を基準に測っているのかを見ると、この違いがかなり見えてきます。

さらに海外では、ブランクを短くするだけでなく、逆にバットを18cm延長してCCSを測った例もあります。

そちらでは、

IP 381g → 407g

AA 73.5° → 77.5°

と、Butt Cutとはほぼ逆方向の変化が確認されています。

今回は、ブランクの長さを変えたときにCCSが何を測っているのかを掘ってみます。

CCSは「同じ距離まで曲げて比較する」測定ではない

最初に重要なのが、IPの測定方法です。

CCSではブランクを水平に固定し、ティップへ荷重を加えて、

ブランク全長の1/3

まで先端を下げます。

例えば2.10mのブランクなら70cmです。

そこまで曲げるために必要だった荷重がIPになります。

つまり、ブランクを切断して短くした場合、

切断前と同じ位置までティップを下げて比較するわけではありません。

短くなったブランクの全長を基準に、改めて1/3を計算します。

ここは、前回紹介した切断実験を見るうえでかなり重要です。

ブランクを切ると、

  • 残っているテーパー構成
  • 全長
  • CCSで要求されるティップ変位量

が同時に変化します。

CCSはその新しい状態を、一つのブランクとして改めて測定しています。

Tip Cutでは測定する変位量が小さくなる。それでもIPは上がった

Tip Cutすると全長が短くなります。

当然、CCSで要求される「全長の1/3」も短くなります。

要求される変位量だけを考えるなら、切断前より少ない距離しかティップを下げません。

ところがRodhouseの実験では、それでもIPは上昇しました。

元がおよそ2~12g相当だったブランクが、

Tip 5cm Cut → 約7~17g

Tip 10cm Cut → 約10~25g

Tip 15cm Cut → 約10~30g

相当まで変化しています。

一方、AAは78°から約73°へ低下しました。

つまり、

全長が短くなってCCSの要求変位量も小さくなったにもかかわらず、必要荷重は増えた。

ここにTip Cutの影響がかなり明確に出ています。

柔らかく細い先端部分がなくなり、それまでより太い部分が新しいティップになる。

その結果、新しい全長の1/3まで曲げるにも、以前より大きな荷重が必要になったと見ることができます。

ただし、そのこととAAが大きくなることは別でした。

BassResourceでも別のブランクで同じ方向の結果が出ている

この点について、Rodhouseとは別の測定例があります。

2021年のBassResourceでMickD氏は、7ftのスピニングロッドをCCS測定しました。

最初の状態は、

Length:84in

1/3まで曲げる荷重:450g

AA:77°

でした。

次に実際に切断する代わりに、トップから一つ下のガイドを新しいティップ位置として扱い、79.5inのロッドとしてCCSを再測定しています。

結果は、

Length:79.5in

荷重:460g

AA:68°

でした。

ERNも、

16.5 → 19.2

へ変化しています。

Rodhouseとは別のロッド、別の測定者です。

それでも方向は同じでした。

ティップ側を短くする

IP相当の必要荷重は増える

AAは大きく低下する

です。

特にAAは77°から68°なので、約4.5インチ短くしただけで9°変化しています。

MickD氏もこの結果から、

CCSで定義するPowerは上昇し、ActionはSlow方向へ変化した

としています。

「ティップが硬くなる」と「Fast Actionになる」は別

ここで、ロッドで使われる「Fast」という言葉が問題になります。

Tipを切れば、新しい先端は以前より太くなります。

当然、ティップ部分は硬くなります。

そのため、

Tip CutするとActionが速くなる

と説明されることがあります。

実際、RodGeeksのブランクカット解説でも、グラスやコンポジットブランクについて、Tip Cutによってティップを硬くし、Actionを“quicken”できると説明しています。

ところがCCSのAAでは、逆の結果が出ています。

Rodhouseでは、

78° → 約73°

BassResourceの別測定では、

77° → 68°

です。

これは「どちらが正しいか」というより、Actionという言葉で何を見ているかが違うと考えた方が分かりやすいでしょう。

ティップだけを触れば、Tip Cut後の方が硬い。

軽い負荷を掛けたときにも、以前よりティップが動きにくくなります。

しかしCCSのAAは、ティップの局所的な硬さを測る数値ではありません。

ブランクを全長の1/3まで曲げた状態で、その曲がり方を角度として評価します。

Tip Cutによって柔らかい先端がなくなれば、規定の変位まで曲げるために大きな荷重が必要になります。

そして、その荷重を掛けた状態では曲がりがより深い部分まで入る。

結果として、

IPは上がるがAAは下がる

という状態が成立します。

つまり、

Stiff Tip=High AA

ではありません。

ここは、メーカー表記のFast/Moderateだけを見ていると分かりにくい部分です。

「Powerが上がった」という表現にも注意が必要

BassResourceでは、このTip Cutによる変化を巡って「Powerとは何か」という議論も起きています。

一方では、

ティップを切ったからといって、ロッドがより大きな魚を持ち上げられるようになるわけではない

という意見。

一方でMickD氏は、

CCSでPowerを「全長の1/3まで曲げるのに必要な重量」と定義するなら、Tip Cut後のPowerは上がっている

としています。

これは両者が違うものを見ています。

CCSのIPは、

規定変位まで曲げるために必要な荷重

です。

ブランクの破断荷重や、魚をどこまで持ち上げられるかを直接測定しているわけではありません。

したがって、今回の記事では、

「Tip Cutするとロッドの強度が上がる」

ではなく、

「Tip CutするとCCS上のIPが上昇した」

と表現する方が正確です。

この区別をしておけば、

IPが増えた=破断強度も増えた

という話にはなりません。

Butt CutではなぜIPが下がったのか

前回のRodhouse実験では、Butt Cutでは反対にIPが低下しました。

15cm切ると、

IP -42g

さらに15cm、合計30cmまで切ると、

さらに -40g

でした。

同時にAAも低下しています。

この結果を見るときにも、CCSが全長の1/3を基準にしていることが重要になります。

Butt Cutするとブランクは短くなる。

新しい全長の1/3も短くなる。

つまり、CCS測定でティップを下げる距離そのものが変わります。

そのためButt Cut前後のIP差は、

「バット側を何cm失ったか」だけでなく、短くなったブランクをCCS規格で改めて測定した結果

です。

ここをさらに分かりやすくする、非常に面白い実測例があります。

逆にButtを18cm延長したらどうなるのか

2023年、RodhouseフォーラムでFranckM35氏が、Statement Original 722を使って逆方向の実験をしています。

測定したのは、

元のStatement Original 722

と、

Butt側へ18cmのブランク片を挿入して延長した状態

です。

結果は、

延長前

IP:381g

AA:73.5°

18cm延長後

IP:407g

AA:77.5°

でした。

つまり、

IP:+26g(+6.8%)

AA:+4°

です。

これは前回のButt Cut実験とほぼ逆方向です。

Rodhouseの切断実験では、Buttを15cm短くすると、

IP -42g

AA 約-4°

でした。

一方、今回のStatement 722では18cm長くすると、

IP +26g

AA +4°

です。

もちろん別のブランクなので、変化量そのものを直接比較することはできません。

しかし、

短くするとIP・AAが低下

長くするとIP・AAが上昇

という方向は一致しています。

Butt Extensionでティップ側は何も変えていない

この延長実験が面白い理由はここです。

Statement 722では、Tipやミドル部分には手を加えていません。

バット側へ18cmを追加しています。

それでもCCSを測り直すと、

381g → 407g

73.5° → 77.5°

へ変化しました。

全長が長くなれば、CCSで要求される1/3の変位量も大きくなります。

より長い距離までティップを下げるため、必要な荷重も変化する。

そして、その負荷状態で測るAAも変化します。

この実験は、

CCSのIPやAAが、ティップ部分だけの特性を示す数字ではない

ことを非常に分かりやすく示しています。

CCSは、

その全長を持ったブランク全体を、規定条件で曲げた結果

を測っています。

「Buttを切っても実釣ではほとんど変わらない」と両立する

ここで、少しややこしい話があります。

BassResourceでは、

Buttを数インチ切っても、実際にはほとんど変化を感じない

という意見があります。

これはRodhouseのCCS測定と矛盾するのでしょうか。

必ずしもそうではありません。

2017年のBassResourceでMickD氏は、既に完成しているロッドについて興味深い説明をしています。

リールシートを動かさず、

リールシートより後ろのButtだけを切った場合

実際に釣りで働く、手元からティップまでの部分は変わりません。

そのため実使用では、PowerやActionの変化をほとんど感じない場合があります。

2021年の別の議論でも、

Buttを3インチ切る程度ならPowerとActionへの影響は小さい

という意見が出ています。

一方、ブランク単体をCCS規格で測れば、全長が変わった以上、IPとAAは変化します。

BassResourceでも、

実際の使用ではほとんど意味のない差でも、CCSプロトコルでは数値が変わる

という指摘があります。

ここはかなり重要です。

CCSで差が出たこと

と、

人間が釣りでその差を感じること

は同じではありません。

これは前回のTNFの記事とも似ています。

測定できる差と、実釣で認識できる差は分けて考える必要があります。

Tip CutはButt Cutとは事情が違う

Butt Cutの場合、完成ロッドでリールシート位置を変えず、後ろだけ短くするなら、実際に曲がる主要部分をほぼ残すことができます。

Tip Cutではそうはいきません。

釣りで最も大きく動くティップ部分そのものを除去します。

BassResourceではTom Kirkman氏の説明として、

Butt CutはPowerを下げ、Tip Cutは使用可能なキャスティングウェイトの下限側を失わせる

という考えが紹介されています。

また、どちら側を切ってもCCS上のActionはSlow方向へ変化するとされています。

MickD氏も、自身の経験として、

Tipから1~2インチ以上失ったロッドは元のロッドとはかなり違う

としています。

これはRodhouseの実験で、

Tip 3cmだけでAAが3°変化した

という結果とも方向が一致します。

「何インチまでなら影響しない」という一律の数字は難しい

RodGeeksでは、自社の1ピースブランクについて、

Buttから6インチ程度ならActionへ影響させず短縮できる

という目安を示しています。

一方、BassResourceでは、

5インチ程度なら何も変わらない

という主張に対して、MickD氏が否定的な意見を出しています。

Rodhouseの実測でも、Butt CutによってIPとAAは実際に変化しました。

ここで重要なのは、

RodGeeksの6インチという数字は同社ブランクについての実用的なメーカー指針

であり、

CCS上のIP・AAが全く変化しないことを保証する一般法則

ではないという点です。

また、数値上の変化があっても、それが実釣上無視できるほど小さい場合もあります。

したがって、

「何cmまでなら変化しない」

より、

「どの程度変化しても実用上問題ないのか」

と考えた方が現実的でしょう。

切る前に「仮想Tip Cut/Butt Cut」を試す方法

BassResourceでは、実際に切る前に変化を確認する方法も紹介されています。

Tip Cutを想定するなら、

切りたい位置付近へガイドを仮止めし、そこを新しいティップとして扱う。

Butt Cutなら、

リールシートを予定する切断量だけ前へ仮固定する。

こうすれば、切断前にある程度フィーリングを確認できます。

実際、先ほど紹介したMickD氏の84in→79.5inのCCS比較も、トップを切断せず、一つ下のガイドを新しいティップ位置として測定したものです。

つまりCCSそのものについても、

実際に切る前に仮想的な短縮状態を作って測る

ことが可能です。

これは、ブランクを一発で切ってしまうよりはるかに安全です。

CCSで測ると「硬さ」「Power」「Action」を分離して考えられる

今回の一連の実験から一番見えてくるのは、

ロッドで普段使っている言葉が、実際には複数の特性をまとめて表現している

ことです。

Tip Cutすると、

ティップは硬くなる。

CCSのIPは上がる。

しかしAAは下がる。

つまり、

硬いティップ

高いIP

Fast Action

は同じものではありません。

Butt Cutでも、

全長が短くなる。

CCSではIPとAAが変化する。

しかし完成ロッドでリールシート後方だけを切った場合、実釣で働く部分はほとんど変わらないこともあります。

さらに逆にButtを延長すれば、

IP 381g → 407g

AA 73.5° → 77.5°

へ動いた実例があります。

CCSは、こうした違いを一つの「硬くなった」「柔らかくなった」で済ませず、

IPとAAという別々の数値に分けて見る

ことができます。

ブランク切断の結果を見ると、CCSの性格もよく分かる

Rodhouseの切断実験は、Tip CutやButt Cutの研究として面白いだけではありません。

CCSという測定方法そのものを理解するうえでも非常に分かりやすい実験です。

CCSでは、その時点でのブランク全長を基準に、

全長の1/3まで曲げるための荷重=IP

と、

そのときの曲がり方=AA

を測ります。

そのため全長を変えれば、測定条件そのものも新しい全長に合わせて変化します。

Tip Cutでは、

IP ↑ / AA ↓

Butt Cutでは、

IP ↓ / AA ↓

Butt Extensionでは、

IP ↑ / AA ↑

という実測が出ています。

さらに別のTip短縮測定でも、

450g → 460g

AA 77° → 68°

という同方向の変化が確認されています。

ここまで揃うと、

ブランクを切ったときの変化を、

「ティップを切ったから硬くなった」

だけで説明するのはかなり情報不足です。

実際には、

どちら側を切ったのか

何cm切ったのか

全長がどう変わったのか

IPがどう動いたのか

AAがどう動いたのか

を分けて見る必要があります。

ブランク加工をCCSで追いかける面白さは、まさにそこにあります。

感覚では一言で「硬くなった」と表現する変化を測ってみると、PowerとActionは必ずしも同じ方向には動いていません。

そして、ブランクを短くするだけでなく、逆に延長して測ってみても、その違いは数字として現れています。

CCSはブランク選びの比較表として使うだけでなく、加工前後で一本のブランクがどう変化したのかを追跡する道具としても使えるということです。

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