ロッドブランクのティップやバットを切って長さを調整すること自体は珍しくありません。
では、実際にブランクを切ったとき、PowerやActionはどのくらい変化するのでしょうか。
感覚ではなく、切断するたびにCCSを測定した実験があります。
フランスのロッドビルド専門店Rodhouseは2021年、同一仕様のブランクを2本用意し、1本はティップ側、もう1本はバット側から段階的に切断。そのたびにCCSのIPとAAを測定しました。
結果はかなり興味深いものでした。
Tip CutではIPが上昇。
Butt CutではIPが低下。
ところがActionを示すAAは、Tip CutでもButt Cutでも低下しています。
つまり、ティップを切って硬くなったからといって、CCS上でFast Actionになるわけではありませんでした。
Tip CutとButt Cutを同じ条件で比較
Rodhouseが行った実験では、仕様が同じ2本のブランクを使用しています。
1本目はティップ側から、
1cm
2cm
3cm
4cm
5cm
7.5cm
10cm
15cm
と段階的に切断。
もう1本はバット側から、
5cm
10cm
15cm
20cm
30cm
と切断しました。
そして、そのたびにCCSの
IP(Intrinsic Power)
AA(Action Angle)
を測定しています。
一度だけ切断前後を比較したのではありません。
少し切る。
測る。
さらに切る。
また測る。
これを繰り返したことで、切断量に対してCCS値がどのように変化していくかまで確認しています。
CCSのIPとAAとは
今回の結果を見るために、CCSの2つの数値だけ簡単に整理します。
IP
ブランクの先端を全長の1/3だけ下げるために必要な荷重です。
必要な重量が大きいほど、CCS上ではPowerが高いことになります。
AA
同じく先端を全長の1/3まで下げた状態で、ティップ側に形成される角度を測ります。
AAが大きければティップ側に曲がりが集中し、小さくなるほど曲がりが深い側へ移ります。
今回の記事では、
AAが低下=よりProgressiveなActionになった
と見れば分かりやすいでしょう。
では、実際に切っていきます。
Tip Cut:わずか3cmでAAが78°から75°へ
まずティップ側です。
切断前のブランクは、
AA 78°
でした。
かなりティップ側へ曲がりが集中したブランクです。
これをティップから3cm切断すると、
78° → 75°
までAAが低下しました。
わずか3cmで3°の変化です。
ところが、その後は変化が緩やかになります。
さらに12cm切断し、合計15cmまでTip Cutしても、そこから低下したAAは約2°。
つまり、
0cm:78°
3cm:約75°
15cm:約73°
という変化になりました。
Rodhouseも、この結果についてTip CutによるAAへの影響は最初の数cmが非常に大きいとしています。
AAの測定値に当てはめたトレンドは直線ではなく、対数曲線。
Rodhouseが示したトレンド曲線は、測定データの**96.5%**を反映しています。
つまり少なくとも今回のブランクでは、
「1cm切るごとに同じだけActionが変化する」
という動きではありませんでした。
最初の数cmで大きく動き、その後は徐々に変化量が小さくなっています。
Tip Cut:一方でIPは上昇した
AAが低下した一方、IPは逆方向へ動きます。
Tipを切るほどIPは上昇しました。
Rodhouseは測定したIPを、実際のキャスティングウェイトに相当する目安として紹介しています。
元のテストブランクは、
約2~12g
相当。
これをTip Cutすると、
| Tip Cut量 | IPから見たおおよその特性 |
|---|---|
| 0cm | 約2~12g |
| 5cm | 約7~17g |
| 10cm | 約10~25g |
| 15cm | 約10~30g |
まで変化しました。
5cm切っただけでも、元の2~12gから7~17g相当。
10cmでは10~25g。
15cmでは10~30g相当です。
もちろん、
「どんな2~12gブランクでも15cm切れば10~30gになる」
という意味ではありません。
Rodhouse自身も、切断による変化量はブランクによって異なると明記しています。
重要なのは、今回の同一ブランクを段階的に測定した結果、
Tipを切るほどIPが継続的に上昇した
ことです。
さらに、AAとは変化の仕方も違いました。
AAは最初の数cmで大きく変化してから緩やかになったのに対し、IPは少なくとも15cmまで、より直線的な増加傾向を示しています。
RodhouseがIPに当てはめたトレンド曲線は、測定データの**99.6%**を反映しています。
Tip Cutすると「Powerは上がるがActionはFastにならない」
ここが今回の実験で特に面白いところです。
Tip Cutした結果、
IPは上昇しました。
一方で、
AAは78°から約73°へ低下しました。
つまりCCS上では、
Power側は強くなる方向
なのに、
ActionはよりProgressiveな方向
へ変化しています。
ティップを切れば、元より太い部分が新しい先端になります。
触ったときのティップは当然硬く感じやすくなります。
しかし、
ティップが硬くなったことと、CCSのAAが大きくなることは同じではありません。
Rodhouseも実験結果の結論で、ActionとPowerを混同しないよう説明しています。
今回の実測では、
Tip Cut
→ IP上昇
→ AA低下
でした。
「ティップを切れば硬くなる」という説明だけでは、この結果の半分しか説明できません。
Butt CutではIPが逆方向へ動いた
次は同一仕様のもう1本です。
こちらはバット側を、
5cm
10cm
15cm
20cm
30cm
と切断しています。
結果はTip Cutとはかなり違いました。
まずIP。
Butt Cutでは、
切るほどIPが低下しました。
最初の15cmで、
IP -42g
さらに15cm切り、合計30cmにすると、
さらに -40g
です。
つまり30cmのButt Cutで、合計すると約82gのIP低下となりました。
しかも変化量が、
最初の15cm:-42g
次の15cm:-40g
とかなり近い。
RodhouseもButt CutによるIP低下はかなり直線的だとしています。
IPのトレンド曲線は測定データの**99.4%**を反映しました。
Tip CutではIPが上昇。
Butt CutではIPが低下。
どちら側を切るかで、CCS上のPowerは正反対へ動いています。
Butt CutでもAAは低下した
ではActionはどうなったのでしょうか。
こちらもTip Cutと同じく、
AAは低下しました。
つまりButt Cutでも、CCS上ではよりProgressiveなActionへ変化しています。
ただし、変化量はTip Cutより小さい。
Tip Cutでは、
15cmで約5°低下。
Butt Cutでは、
30cmで約5°低下。
今回のブランクでは、同程度のAA変化を発生させるために、Butt側ではTip側のおよそ2倍の切断量が必要でした。
Rodhouseもこの差を明確に指摘しています。
つまりActionへの影響は、
Butt CutよりTip Cutの方が大きかった
という結果です。
Butt CutのAAも最初に大きく変化した
Butt CutでもAAの変化は直線的ではありません。
最初の15cmで、
約4°低下。
ところが次の15cm、つまり15cmから30cmまで切った際の低下は、
約1°
でした。
Tip Cutと似ています。
Tipでは、
最初の3cm:-3°
その後12cm:約-2°
Buttでは、
最初の15cm:約-4°
その後15cm:約-1°
です。
どちらも、
最初に切った区間のAA変化が大きく、その後は変化量が小さくなる
という傾向を示しています。
一方、IPはTip・ButtともAAより直線的に変化しています。
同じ切断でも、
IPとAAでは変化の仕方そのものが違う
ことが分かります。
実験結果を並べるとかなり特徴的
Rodhouseの結果を大きく整理すると、こうなります。
| 加工 | IP | AA | Rodhouseの評価 |
|---|---|---|---|
| Tip Cut | 上昇 | 低下 | Power側は上昇、よりProgressive |
| Butt Cut | 低下 | 低下 | Power側は低下、よりProgressive |
つまり、
IPはTipとButtで正反対。
AAはどちらも同じ方向。
です。
これはかなり特徴的な結果です。
特にTip Cutでは、
IPが上昇しているにもかかわらずAAは低下する
という、一見すると分かりにくい変化が実際に測定されています。
さらに「何cm切ったか」だけでは説明できない
今回の実験でもう一つ残しておきたいのが、変化が単純比例ではなかったことです。
例えばTip CutのAA。
3cmで3°変わったなら、
15cmでは15°程度変わる、
とはなりません。
実際には、
3cmで-3°
15cmで合計約-5°
です。
Butt側でも、
15cmで約-4°
なのに、
30cmでも合計約-5°
です。
一方、IP側は比較的直線的。
Butt Cutなら、
15cm:-42g
次の15cm:-40g
と非常に近い変化でした。
したがって今回の実験からは、
切断量に対するPower変化とAction変化は、同じカーブを描かない
ことも確認できます。
これはブランクを切ったときの変化を考える上でかなり重要です。
RodhouseはTipを1cm単位で切ることを推奨
この結果からRodhouseは、実際にブランクを加工する場合、
Tip Cutは1cmずつ
Butt Cutは5cmずつ
進めることを推奨しています。
実測結果を見ると、その理由も分かります。
特にTip側は、最初の3cmだけでAAが78°から75°まで変化しています。
「あと5cmくらいなら大したことはないだろう」
とは言いにくい結果です。
一度に大きく切るより、
少し切る
↓
測る
↓
さらに切る
という方法の方が、狙ったところで止めやすくなります。
ブランクを切ることより「切るたびに測った」ことが面白い
ブランクをTipやButtから切って特性を調整すること自体は、ロッドビルドでは昔から行われています。
今回のRodhouse実験が面白いのは、そこではありません。
同じブランクを少しずつ切断し、そのたびにCCSを測ったことです。
その結果、
- Tip CutではIPが上昇した
- Butt CutではIPが低下した
- AAはどちらも低下した
- Tip Cutの方がAAへの影響が大きかった
- AAは最初の切断で大きく動き、その後変化が緩やかになった
- IPはAAより直線的に変化した
- Tip Cut 5cm、10cm、15cmでIPから見たルアーウェイト特性も大きく変化した
ところまで数字として確認できました。
特に、
「Tipを切れば硬くなる」
という経験則をCCSで測定すると、
IPは確かに上がった。
しかし同時に、
AAは下がった。
ここが今回の実験で最も興味深い部分です。
ブランクを切ったときに「硬くなった」「Actionが変わった」と感覚だけで評価するのではなく、PowerとActionを別々に測ると、それぞれが別の動きをしていることが見えてきます。
では、なぜTip CutではIPが上昇するのにAAは低下するのか。
また、Butt CutしたときのCCS値には、ブランクが短くなったこと自体がどのように影響しているのでしょうか。
さらに海外では、逆にバットを延長してCCSを測定した例もあります。
この部分は次の記事で、CCSの測定原理まで含めて掘り下げます。

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