ロッドには、ML、M、MHといったパワー表記と、Moderate、Fast、Extra Fastといったアクション表記がある。
ところが海外のロッドビルド掲示板を見ると、この表記だけではブランクを比較できないとして、実際にブランクを曲げて数値化しているビルダーがいる。
そこで使われているのがCommon Cents System、通称CCSである。
CCSでは、「このブランクはMLなのかMなのか」「FastなのかExtra Fastなのか」と判定するのではない。
実際にブランクを一定量曲げ、そのために必要だった重量と、曲がったときの角度を測定する。
すると、同じ「ML・Fast」と書かれているブランクでも、かなり違うことが分かる。
- CCSとは何なのか
- CCSで測るのはパワーとアクション
- Intrinsic Powerはブランクを1/3曲げるための重量
- Action Angleは曲がったときの角度
- CCSは「Fast=何度」と決める規格ではない
- 同じML・Fastでも測ると全然違う
- Medium表記だけでも大きな差があった
- 「Medium」は物理量ではない
- Point BlankのLightが他社のMLより強い
- Point Blank PB701MLFは「MLなのか?」という話が何度も出ている
- RainShadowはメーカー自身がCCSを公開している
- 同じシリーズ内でも「ML」は一つではない
- 海外ビルダーは自分の好きなロッドまで測る
- ブランドではなく数字から候補を探す
- 海外ではCCS実測値を共有する場所まである
- CCSの測定値にもズレはある
- CCSだけでルアー適正重量は決まらない
- CCSだけで感度も分からない
- それでもCCSが便利な理由
- MLやFastが間違っているわけではない
- まとめ
CCSとは何なのか
Common Cents Systemは、William Hannemanによって考案されたロッドの測定方法である。
もともとはフライロッドを客観的に比較するために作られた。
当時から問題になっていたのが、メーカーごとのロッド表記だった。
同じ6番のフライロッドでも、実際に曲げてみるとパワーもアクションも違う。
メーカー名が変われば、同じ表記でも同じロッドとは限らない。
CCSは、このメーカー表記から一度離れ、ロッドそのものを測定するために作られた。
現在でも海外のロッドビルダーの間では、ブランク比較にCCSを使っている例がある。
RainShadowを展開するBatson Enterprisesでは、自社ブランクのCCSデータまで公式に公開している。
CCSで測るのはパワーとアクション
CCSで中心となる数値は、
- Intrinsic Power
- Action Angle
の二つである。
Intrinsic PowerはIPと略される。
Action AngleはAAと略される。
この二つを使えば、
「ML・Fast」
ではなく、
「343g・77°」
という形でブランクを表現できる。
Intrinsic Powerはブランクを1/3曲げるための重量
IPの測定では、ロッドまたはブランクを水平に固定する。
そこからティップへ重量を掛けていき、ティップがロッド全長の1/3だけ下がるところまで曲げる。
7ftのロッドなら84inなので、その1/3である28inまでティップを下げる。
その状態まで曲げるために必要だった重量を測る。
例えば343g必要だったなら、
IP=343g
となる。
当然、同じ条件なら数値が大きいブランクほど、そこまで曲げるために大きな力が必要になる。
「Medium Light」という名称ではなく、実際に何g必要だったのかを数字で残せる。
Action Angleは曲がったときの角度
IPを測るために全長の1/3までロッドを曲げた状態で、ティップ部分の角度も測定する。
これがAAである。
例えば、
IP 343g
AA 77°
という形になる。
AAが大きいほど、曲がりがティップ側へ集中した形になる。
同じパワーでも、
343g・65°
と
343g・80°
では、曲がり方が違う。
これによって、パワーとアクションを別々に比較できる。
CCSは「Fast=何度」と決める規格ではない
ここはCCSを理解するうえで重要である。
CCSは、
「70°以上ならFast」
「77°以上ならExtra Fast」
という新しい名称規格を作るためのものではない。
海外掲示板では、AAからFastやExtra Fastへ変換する独自の目安を使っているビルダーもいる。
しかし、CCSそのものはAAをFast、Moderate、Slowなどの名称へ戻すことを目的としていない。
77°なら、77°で比較する。
これがCCSの考え方である。
同じML・Fastでも測ると全然違う
ここからがCCSの面白いところである。
2024年末のBassResourceでは、長年CCSを測定しているユーザーが、自分が所有する2本のブランクについて書いている。
どちらもメーカー表記は、
Medium Light/Fast
だった。
ところがCCSで測ると、
| メーカー表記 | ERN | AA |
|---|---|---|
| ML/Fast | 9 | 65° |
| ML/Fast | 19.9 | 77° |
という結果になっている。
同じML。
同じFast。
しかし、測定値は大きく違う。
このユーザーは、ERNでもAAでも3程度違えば実際に使ったときにはっきり違いを感じるとしている。
その基準から見ても、この2本はかなり離れている。
商品ページだけを見れば、どちらも「ML・Fast」である。
CCSで見ると、同じカテゴリーへ入れてよいのか疑問になるほど違う。
Medium表記だけでも大きな差があった
同じユーザーは、自分が測定したMedium表記のブランクについても数字を出している。
その範囲は、
ERN 15未満から25.9
まであった。
すべてメーカー表記ではMediumである。
ここで本人は面白い説明をしている。
例えば同じメーカーでも、
ドロップショット用のMediumならERN 13程度。
ジグ用のMediumならERN 20程度。
というような差が出ることがある。
つまりメーカーが付けている「Medium」は、純粋にブランクの強さだけで決まっているとは限らない。
そのロッドを何に使うのかという商品上の位置付けまで含めて、Mediumと呼んでいる場合がある。
「Medium」は物理量ではない
ここがCCSを見ると分かりやすくなる部分である。
例えばメーカーが、
ドロップショット用Medium
と
ジグ用Medium
を販売していたとする。
どちらもMediumだからといって、同じ力で曲がる必要はない。
求められるロッドの性格が違うからである。
同じことは、
- ML
- M
- MH
- Fast
- Extra Fast
にも起こる。
これらはロッドを分類するための名称であって、kgやmmのような物理単位ではない。
そのため、メーカーをまたいで比較するとズレが出る。
CCSでは、その名称を使わずに実測値だけを見る。
Point BlankのLightが他社のMLより強い
2022年のBassResourceでは、フィネス用スピニングロッドを作るため、複数メーカーのブランクをCCSで比較したデータが共有されている。
掲示板上で出ていた値は次のようなものだった。
| ブランク | 表記 | IP |
|---|---|---|
| Point Blank PB701MLF | ML | 530g |
| Point Blank PB701LXF | L | 430g |
| NFC X-Ray 732 | ― | 422g |
| St. Croix SCV70ML | ML | 375g |
| RainShadow Eternity 72MLF | ML | 343g |
| NFC 703 | ― | 343g |
ここを見ると、かなり分かりやすい。
Point BlankのPB701LXFはメーカー表記ではLightである。
それでもIPは430g。
St. CroixのMedium Lightは375g。
RainShadowのMedium Lightは343g。
つまり、
Point BlankのLightの方が、他社のMedium LightよりCCS上では強い。
メーカー表記だけなら、
L < ML
と考えたくなる。
実測すると逆転している。
Point Blank PB701MLFは「MLなのか?」という話が何度も出ている
Point BlankのPB701MLFは、CCSを使う意味が特に分かりやすいブランクである。
商品名ではML。
しかし海外掲示板では、実際に測ったユーザーから、
575g・77°
約580g・77°
といった数字が報告されている。
別の測定では530gという値も出ている。
複数のユーザーから、
「これはMLというよりMedium側ではないか」
という評価が出ている。
2025年のBassResourceでも、このPB701MLFについてERN 19.9・AA77°という測定値が紹介され、St. CroixのSCV70MFよりもパワーがあるという話が出ている。
カタログではML。
実際に曲げて測ったユーザーから見ると、かなり強い。
このようなブランクをメーカー表記だけで選べば、想定していたロッドと違うものになる可能性がある。
RainShadowはメーカー自身がCCSを公開している
CCSは掲示板でユーザーが勝手に測っているだけではない。
RainShadowを展開するBatson Enterprisesは、現在自社ブランクのCCSデータを公式に公開している。
Eternity RX10のスピニングモデルでは、例えば、
| 型番 | IP | AA |
|---|---|---|
| ETES68ML | 312g | 76~77° |
| ETES72ML | 343g | 76~77° |
| ETES76ML | 398g | 81~82° |
となっている。
3本ともML系である。
しかし数値を見ると同じではない。
6ft8inのETES68MLは312g。
7ft2inのETES72MLは343g。
7ft6inのETES76MLは398g。
長くなるにつれてIPも変わっている。
さらにETES76MLはAAが81~82°まで上がる。
同じRainShadow。
同じEternity RX10。
同じML。
それでも数字を見れば、それぞれ違うブランクであることが分かる。
同じシリーズ内でも「ML」は一つではない
メーカー間の違いだけなら、
「メーカーごとに基準が違う」
で終わる。
しかしRainShadowの公式CCSを見ると、それだけではない。
同じメーカー、同じシリーズ、同じMLでも数値が変わる。
つまりMLという名称は、
「この数値の範囲ならML」
という共通の測定値を表しているわけではない。
ロッド長や用途を含めた、そのシリーズ内での位置付けとして使われている。
CCSを見ることで、その中身を数字で確認できる。
海外ビルダーは自分の好きなロッドまで測る
CCSの使い方は、カタログの表記を検証するだけではない。
2021年のBassResourceでは、市販ロッドを自分でCCS測定し、新しく購入するブランクと比較しようとしているユーザーがいる。
所有しているG.Loomisなどを実際に測り、
「このロッドに近いものを作りたい」
という基準に使っている。
これはロッドビルドではかなり便利な使い方である。
例えば長年使っているロッドがある。
そのロッドが非常に使いやすい。
しかし廃番になっている。
通常なら、
「Mだから次もM」
「Fastだから次もFast」
と探すことになる。
CCSなら、現在のロッドを自分で測って、
IP 400g
AA 75°
という基準を作れる。
次のブランクも、その数字に近いものから探せる。
ブランドではなく数字から候補を探す
海外掲示板では、Point Blank、RainShadow、North Fork Composites、St. CroixなどをCCS値で比較している例がある。
「どこのメーカーが良いか」
ではなく、
「今使っているロッドに近いパワーならどれか」
という探し方ができる。
例えば現在のロッドが350g前後なら、343gのRainShadowを候補にする。
もう少し強くしたいなら400g前後を探す。
さらにAAを見て、今よりティップ側へ曲がりを寄せるのか、少し深く曲がるものにするのかを考える。
ブランクの選び方そのものが変わる。
海外ではCCS実測値を共有する場所まである
Rodbuilding.orgには、「CCS Data Log」というスレッドがある。
さまざまなユーザーが自分で測定したブランクのCCSデータを書き込んでいる。
2025年末の時点で13ページ、255投稿まで増えている。
単にCCSの方法を説明するスレッドではない。
実際のブランクを測定し、そのデータを共有する場所になっている。
別のスレッドでもCCSの測定方法や解釈について議論が続いている。
海外ロッドビルダー全員がCCSを使っているわけではない。
しかし、CCSでブランクを測り、そのデータを共有して比較しているビルダーが存在する。
CCSの測定値にもズレはある
CCSは数値化できるからといって、誰が測っても完全に同じ数字になるわけではない。
先ほどのPoint Blank PB701MLFでも、
530g
575g
約580g
と測定値に差がある。
ブランク自体の個体差も考えられるが、測定方法の違いでも数字は変わる。
2021年のBassResourceでは、初めてCCSを測定したユーザーが、所有するロッドすべてでAA84~89°というかなり高い数字になり、測定方法について質問している。
そこで経験者から指摘されたのが、ロッドの固定位置だった。
CCSでは、バット側から全長の10%までを固定する。
どこまで固定するかが違えば、当然曲がり方も変わる。
数字を比較するなら、同じ方法で測る必要がある。
CCSだけでルアー適正重量は決まらない
CCSにも分からないものがある。
IPが343gだったから、
「このブランクの適正ルアーは1/8~3/8oz」
と直接決めることはできない。
CCSのIPは、全長の1/3までロッドを曲げるために必要な力を測っている。
キャスト時のルアー重量そのものを測定しているわけではない。
海外のプロビルダーからも、キャスティングやスピニングブランクでは、CCSから信頼できるルアーウェイトレンジを直接求められないことが指摘されている。
メーカーのルアーウェイト表記が不要になるわけではない。
CCSだけで感度も分からない
同じIPとAAなら、同じロッドになるわけでもない。
例えば、
- ブランク重量
- 使用素材
- 肉厚
- ガイド重量
- グリップ
- リールシート
- 復元速度
が違えば、実際に使ったフィーリングも変わる。
CCSで測っているのは、一定の負荷を掛けたときの静的なパワーとアクションである。
感度そのものを測定しているわけではない。
海外掲示板でも、CCS値が近いブランクでも感度やフィーリングは違うという話が出ている。
ロッドの復元速度などを測ろうとすると、CCSとは別の測定が必要になる。
それでもCCSが便利な理由
CCSだけでロッドのすべてが分かるわけではない。
しかし、メーカー表記だけでは分からない部分を二つの数値にできる。
例えば、
A社 ML/Fast
B社 ML/Fast
だけでは、どちらが強く、どちらがティップ側へ曲がるのか分からない。
それを、
A社 IP 340g/AA 76°
B社 IP 530g/AA 77°
とすれば、一気に違いが分かる。
さらに自分が現在使っているロッドを測れば、
「今のロッドより少し強いもの」
「同じパワーでももう少しティップ寄りに曲がるもの」
という探し方もできる。
ロッドビルダーが欲しいのは、メーカーが付けたカテゴリー名だけではない。
次に使うブランクを選ぶための比較材料である。
MLやFastが間違っているわけではない
ここまで見ると、メーカー表記がいい加減に見えるかもしれない。
しかし、メーカーが付けるMLやFastには、そのロッドをどのように使わせるかという意味も含まれている。
ドロップショット用のMediumと、ジグ用のMediumが同じ物理特性である必要はない。
メーカーにとっては、ラインナップの中でどの位置にあるロッドなのかを伝える名称でもある。
CCSは、その表記を否定するためのものではない。
その名称とは別に、ブランクそのものの特性を測っている。
まとめ
海外のロッドビルダーには、ブランクをCommon Cents Systemで測定している人がいる。
CCSでは、パワーをIntrinsic Power、曲がり方をAction Angleとして数値化する。
その結果、メーカー表記では同じ「ML・Fast」でも、実際には大きく違うブランクが存在することが分かる。
海外掲示板では、ML/Fast同士でERN 9・AA65°と、ERN 19.9・AA77°という大きな差が出た実例まである。
Point Blankでは、Light表記のPB701LXFが、他社のMedium Lightより大きなIPを持つという測定例もある。
PB701MLFについては、複数ユーザーから500gを大きく超えるIPが測定され、「MLというよりMediumではないか」という話が何度も出ている。
一方、RainShadowはメーカー自身がEternity RX10のIPとAAを公開している。
同じメーカー、同じシリーズ、同じMLでも数値は異なる。
海外ビルダーは、このCCSをメーカー表記の検証だけに使っているわけではない。
自分が現在使っているロッドを測り、その数値を基準として次のブランクを探す。
複数メーカーの候補を数字で比較する。
実測したデータを他のビルダーと共有する。
そのためにも使われている。
ML、M、MH、Fast、Extra Fastはロッドを分類するためには便利である。
しかし、それ自体が物理量ではない。
実際にどれくらいの力で曲がり、そのときどのような角度になるのか。
海外では、その部分まで測ってブランクを選んでいるビルダーがいる。

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