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「ロッドの“シャキッと感”は測れるのか?海外ビルダーが使うTNF」

海外の流行

前回の記事では、海外のロッドビルダーがCCS(Common Cents System)を使い、ブランクのパワーとアクションを数値化している例を紹介した。

CCSを使えば、

  • どれくらいの力で曲がるのか
  • どこから曲がるのか

を、メーカーのML、M、Fastといった名称ではなく数字で比較できる。

しかし、同じ長さ、同じパワー、同じアクションのブランクでも、実際に振ってみると違いがある。

曲げて離した瞬間に素早く収束するブランク。

しばらくティップが振動し続けるブランク。

一般には「シャキッとしている」「ダルい」「復元が速い」と表現される部分である。

海外のロッドビルダーには、この動的な違いまで数値化しようとしている人がいる。

そこで使われているのが、

TNF(True Natural Frequency)

である。

CCSにも動的特性を測るCCFがある

最初に整理しておきたいのが、TNFとCCSの関係である。

CCSにはもともと、

  • Power
  • Action
  • Speed

をそれぞれ測定する仕組みがある。

PowerはERN。

ActionはAA。

そしてSpeed、つまり反応と復元の速さを測るために用意されているのがCCF(Common Cents Frequency)である。

CCFはロッドを振動させ、その周波数を測定する。

ただし、ロッドだけを自由振動させているわけではない。

CCSではフライラインを装着した状態のロッドを想定し、ティップへ規定の重量を追加して周波数を測る。

CCSを考案したWilliam Hannemanは、裸のロッドだけではなく、ロッドとラインを組み合わせた「fly rod outfit」のFeelを測る方法としてCCFを考案している。

TNFは、このCCFとは別の測定方法である。

TNFはCCSの一部ではない

海外掲示板でTNFを継続的に紹介しているのが、長年ロッドビルドを行っているMick Danek氏である。

現在Anglers Resourceにも、Danek氏のTNF測定について独立した解説ページが公開されている。

TNFでは、CCFのように測定用のウェイトをティップへ追加しない。

ブランクまたは完成したロッドそのものを曲げ、一度離して自由に振動させる。

そこで測るのが、そのロッド自身の自然振動数である。

Anglers ResourceではTNFについて、

ロッドを曲げて離した後に振動する速さ

として説明している。

工学的には、片持ち梁として固定されたロッドの曲げ方向の自然振動数を見る方法になる。

CCFとTNFはどちらも振動を見るが、測定している条件が違う。

TNFでは何を測っているのか

ロッドのティップを少し曲げる。

手を離す。

するとロッドは、

右、左、右、左……

と振動しながら、やがて元の位置へ収束する。

この振動が速いロッドほど自然振動数は高くなる。

Danek氏がBassResourceで説明している考え方では、同じ長さ、同じパワー、同じアクションの2本を比較した場合、

TNFが高い方が、曲げられた状態からの復元が速い

とされている。

つまり前回扱ったCCSとは役割が違う。

CCSでは、

「どのくらい曲がるか」

を見る。

TNFでは、

「曲がった後にどのくらい速く戻るか」

を見る。

「Fast Action」と「復元が速い」は別の話

ロッドにはFast Actionという言葉がある。

そのため、

Fast Action=戻りが速い

と見えてしまう。

しかし、CCSでいうActionとTNFで測る復元速度は別の特性である。

CCSのAction Angleは、

ブランクのどの部分を中心に曲がっているのか

を示している。

TNFが見ているのは、

曲げたロッドを離した後、どのくらいの速さで振動するのか

である。

CCS公式でもActionとSpeedは別々の測定項目になっている。

そのため、

Fast ActionだからTNFも必ず高い

とは限らない。

ティップ側を中心に曲がるロッドでも、離した後の振動収束が遅いロッドは存在できる。

逆に、より深く曲がるロッドでも、素材や重量によっては速く復元することができる。

「どこから曲がるか」と「どれだけ速く戻るか」は別々に考える必要がある。

TNFの測定は意外と簡単

Anglers Resourceで紹介されているDanek氏の測定方法は、大掛かりな試験設備を使わない。

基本的には、

  1. ロッドまたはブランクのバット側を固定する
  2. ティップを2~4インチ程度曲げる
  3. 手を離して自由振動させる
  4. Android端末と周波数測定アプリを使って振動を測る

という方法である。

Danek氏はBassResourceでも、Android端末と無料アプリがあれば測定でき、5分も掛からないとしている。

専門の振動計測装置を購入しなくても試せるところが、この方法の特徴である。

CCSにTNFを加えるとロッドの情報が一つ増える

2025年のBassResourceでDanek氏は、ブランクを客観的に説明するための項目として、

  • Length
  • Weight
  • Power
  • Action
  • TNF

を挙げている。

前回の記事で扱ったCCSでは、パワーとアクションを測定できた。

そこにロッド重量とTNFまで加える。

例えば同じ7ft、同じIP、同じAAのブランクが2本あったとする。

静的に曲げた状態ではかなり近い。

しかしTNFが違えば、振ったときの戻り方は違う。

CCSだけでは分からなかった部分を、TNFで追加して比較できる。

ガイドを付けるとTNFが下がる

ロッドビルドでTNFが特に面白くなるのが、ガイドを装着したときである。

Danek氏はBassResourceで、

裸のブランクへガイドを追加するとTNFが低下する

と繰り返し報告している。

理由は、ブランクに質量が追加されるためである。

ブランクだけの状態でTNFを測る。

ガイドを仮止めする。

もう一度TNFを測る。

すると、ガイド重量によって自然振動数が変わる。

これなら、

「軽いガイドの方が良さそう」

という感覚的な話ではなく、

ガイドを付けることでブランクの動的特性がどれだけ変わったのか

を数字として確認できる。

ステンレスとチタンの違いまで測っている

2025年のBassResourceでは、Danek氏がガイド重量とTNFについてかなり具体的に説明している。

同じサイズで比較した場合、

ステンレスフレームより軽いチタンフレームの方が、裸ブランクからのTNF低下を小さくできる。

そのため、特に高性能なフィネスロッドを作る場合には、

  • 小径ガイド
  • チタンフレーム
  • 小径ランニングガイド
  • チタンフレームのトップガイド

を使っているとしている。

これは単純に、

「チタンは軽いから高性能」

という話ではない。

裸ブランクのTNFを測る。

ステンレスガイドを付ける。

チタンガイドへ変更する。

その差を見る。

ガイド選択によるロッドの変化を実際に測定している。

小径ガイドを使う理由も同じ

ガイドの素材だけではない。

サイズを小さくすれば重量も減る。

Danek氏はフィネスロッドではFuji KB、KTなどの小径ランニングガイドを使用し、4mm程度まで小さくする例を挙げている。

もちろんラインやノットが通る必要はある。

しかし使用条件が許す範囲でガイドを小さくすれば、ブランクへ追加する重量を減らせる。

その結果、完成したロッドのTNFを裸ブランクに近い状態で残しやすくなる。

海外で行われているマイクロガイドや小径ガイドの議論にも、TNFという別の説明軸が加わる。

同じ重量でも付ける場所によって影響が違う

TNFの話で特に面白いのが、総重量だけを見ていないことである。

例えばロッドへ1g追加するとする。

グリップ付近に1g追加する。

ティップ付近に1g追加する。

ロッド全体として増えた重量は同じ1gである。

しかしTNFへの影響は同じではない。

Danek氏の測定では、重量がティップ側へ行くほど自然振動数への影響が大きくなる。Anglers ResourceのTNF解説でも、ティップ側の質量が復元速度へ大きな影響を与えることが紹介されている。

ロッド重量を、

「完成重量○○g」

だけで考えるのとは違う。

重要なのは、その重量がロッドのどこに存在しているかである。

バット側の大型ガイドでは差がほとんど出ない場合もある

これはさらに面白い実測である。

スピニングロッドでは、バット側に比較的大きなリダクションガイドを使用する。

例えばFuji KL-Hの20や10などである。

これらをステンレスからチタンへ変更すれば、当然ロッド全体の重量は軽くなる。

しかしDanek氏の測定では、Extra Fast系のスピニングブランクで、バットに近い大型リダクションガイドを軽くしても、TNFへの影響がほとんど確認できない場合があるとしている。

一方、同じ重量差でもランニングガイドやティップトップでは影響が出やすい。

つまり、

高価なチタンガイドへ全部交換すれば同じ効果が出る

という話でもない。

動く量の大きいティップ側ほど、重量削減の効果が出やすい。

TNFを測ると、この違いまで確認できる。

ティップトップだけでも違いが測れる場合がある

Anglers Resourceの記事では、Danek氏がチタンとステンレスのティップトップを比較した実験にも触れている。

ティップトップは非常に小さな部品である。

重量差もわずかである。

それでもブランクによっては、チタン製トップへ変更したときのTNF差が明確に確認できたとしている。

ティップトップはロッドの最先端にある。

部品自体は小さくても、振動するブランクにとっては最も影響が大きくなりやすい位置になる。

Danek氏が高性能ロッドでチタン製ティップトップを使用する理由の一つもここにある。

ダブルフットガイドを増やすとどうなるのか

2023年のBassResourceでは、7ft6in MHロッドへダブルフットのFuji KWガイドを多数使用しようとしているユーザーがいる。

そこで話題になったのが、ガイド重量によるロッドの復元速度だった。

Danek氏は、軽いガイドほど復元が速くなり、TNFを測ればその違いを確認できるとしている。

ダブルフットだから悪いという話ではない。

強度や用途によってダブルフットが必要なロッドもある。

しかし、不要な強度のためにガイド重量を増やせば、その重量は完成したロッドの動的特性にも影響する。

TNFは、その影響を見る一つの方法になる。

「完成重量が軽い」と「復元が速い」は同じではない

ここまでを見ると、ロッド重量そのものとの違いも分かる。

例えば2本とも完成重量100gだったとする。

Aはグリップ側が重く、ティップ側が軽い。

Bはグリップ側が軽く、ティップ側に重量が集中している。

同じ100gでも、TNFは同じとは限らない。

TNFが見ているのは単なる総重量ではない。

ブランクの剛性と、ロッド全体の質量分布によって決まる動的な特性である。

そのため、

「ロッドを何g軽量化した」

という情報だけでは分からない違いを見られる。

高弾性ブランクほどTNFが高い傾向が出ている

Danek氏は多数のブランクを測定した経験から、高価格帯・高弾性系のブランクほどTNFが高くなる傾向があると報告している。

2024年のBassResourceでも、

高グレード素材ほどTNFが高く、曲げた状態からの復元が速くなる傾向がある

としている。

本人が特に高い評価をしているのが、

Anglers Resource Point Blank

である。

2024年の「NRX+と同等のロッドを作れるか」という議論では、本人が経験したブランクの中で、

1位 Point Blank
2位 RainShadow RX10

としており、その理由の一つにPower-to-Weight RatioとTNFの高さを挙げている。

これはメーカー公式比較ではなく、Danek氏自身が測定・使用した範囲での評価である。

しかし前回のCCS記事でも登場したPoint Blankが、今度は動的特性でも話題になるのは興味深い。

Point BlankとRainShadow RX10はCCSだけでは比較しきれない

前回の記事では、CCSを使ってPoint BlankやRainShadowなどのパワー・アクションを比較した。

しかしTNFまで考えると、比較項目が一つ増える。

例えば、

  • 長さ
  • IP
  • AA

が近い2本がある。

ここまではCCSで似たブランクに見える。

しかしTNFを測ると、

Aは復元が速い。

Bは少し振動が長く残る。

という違いが出る可能性がある。

Danek氏は2025年のBassResourceでも、CCSにTNFを追加すれば、ブランクやロッドの特性をより客観的に説明できるとしている。

CCSで終わりではない。

静的特性が似ているブランクの次の比較としてTNFが使われている。

ロッドを修理するとCCSは変わらなくてもTNFが変わる

TNFとCCSの違いが非常に分かりやすい実例もある。

Danek氏は以前製作したロッドのティップ付近を修理し、その前後で測定を行っている。

修理後も、

  • CCSのPower
  • CCSのAction

には大きな変化が出なかった。

静的に曲げた状態では、元のロッドとかなり近い。

ところが修理によってティップ付近へ重量が追加された結果、

TNFは約10%低下した

と報告している。

つまり、

曲がりのパワーと位置はほぼ変わっていないのに、戻り方は変わった。

CCSだけを測っていれば、かなり同じロッドに見える。

TNFまで測ると、修理によって動的特性が変化したことが分かる。

この例は、CCSとTNFが別のものを測っていることを非常に分かりやすく示している。

TNFが高いロッドは「crisp」「clean」と表現される

Danek氏がTNFの説明でよく使っているのが、

crisp

clean

という表現である。

日本のロッド表現なら、

  • シャキッとしている
  • ダルさが少ない
  • 収束が速い
  • 振り抜いた後にティップが残らない

といった感覚に近い。

この「シャキッと感」そのものをTNFが完全に測っているわけではない。

しかし、その感覚を構成する一つの要素である、

曲げた後の復元速度

については数値として比較できる。

ここがTNFの面白いところである。

TNFは完成したロッドの設計確認にも使える

TNFはブランク選びだけに使うものではない。

裸ブランクを最初に測る。

ガイドを仮止めして測る。

完成後にもう一度測る。

これを行えば、

ロッドを組むことでブランク本来の動的特性をどれだけ失ったのか

も確認できる。

例えば高価な高弾性ブランクを購入した。

しかしティップ側へ重いガイドを多数取り付けた。

完成ロッドのTNFが大きく低下した。

これなら、高性能なブランクを使っておきながら、部品選択でその特性を変えてしまったことが数字として見える。

逆に小径・軽量ガイドを使い、裸ブランクからのTNF低下を小さくできれば、その設計判断も確認できる。

TNFはロッドの性能をすべて表しているわけではない

ここまで見ると、

「TNFが一番高いロッドが一番優れている」

ようにも見える。

しかしTNFは自然振動数を測っているだけである。

ロッドには、

  • Power
  • Action
  • 長さ
  • 重量
  • ルアー適性
  • 強度
  • ガイド構成
  • グリップ
  • 使用ライン

など、TNFとは別の要素がある。

ヘビーロッドなら、大きなガイドやダブルフットガイドが必要な場合もある。

ノットを通すならランニングガイドを小さくできない場合もある。

低いTNFが、そのロッドの用途として間違っているという意味でもない。

TNFは、

ロッドの動的特性を比較するための一つの数字

である。

CCSと同じように、数値そのものが良い悪いを決めるものではない。

まとめ

海外のロッドビルダーには、ブランクや完成ロッドの動的特性をTNFで測定している人がいる。

TNFはTrue Natural Frequencyの略で、ロッドを曲げて離した後の自然振動数を見る方法である。

前回扱ったCCSでは、

  • Power
  • Action

を静的に測定した。

TNFでは、そのロッドが曲げられた後、

どれくらい速く振動し、復元するのか

を見る。

この測定を使うと、裸ブランクへガイドを追加したときの変化まで確認できる。

海外の実測では、

  • ガイドを追加するとTNFが下がる
  • ステンレスより軽いチタンガイドでは低下を抑えられる
  • ランニングガイドの小径化でも変化する
  • バット側の大型ガイドは影響が小さい場合がある
  • ティップ側の重量は大きく影響する
  • ティップトップだけでも差が出る場合がある

という結果が報告されている。

さらに、ティップ付近を修理したロッドでは、CCSのPowerとActionがほとんど変わらなかったにもかかわらず、TNFだけ約10%低下した例もある。

同じように曲がるロッドでも、同じように戻るとは限らない。

ロッドの「シャキッと感」は完全な感覚論だけではなく、その一部である復元速度については数値で比較できる。

海外の一部ロッドビルダーは、CCSでパワーとアクションを測ったその先で、TNFを使ってブランクや完成ロッドの動きまで測り始めている。

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