ロッドブランクには、塗装されたもの、クリア仕上げされたもの、カーボンの表面がそのまま見えるものなど、いくつかの仕上げがある。
ロッドビルドでは、購入したブランクをそのまま使うこともできるし、好みの色へ塗装することもできる。逆に、完成品や塗装済みブランクから塗装を剥がし、カーボンの表面を出して使うビルダーもいる。
海外のロッドビルダーの間でも、塗装を残すか無塗装にするかについて意見が分かれている。
理由として出てくるのは見た目だけではない。ブランクへ塗料を追加すれば重量が増える。その重量がロッドの復元速度や感度へ影響するのか、塗装をなくすことでブランクの耐久性が変わるのかという話まで出ている。
海外には最初からRaw Graphiteで販売されるブランクがある
RainShadowのEternity RX10には、「Sanded Swirl Raw Graphite」と明記されたモデルがある。
例えばETES610MXF-SSは6ft10in、X-Fast、Mediumのブランクで、メーカー表記の重量は1.28oz。表面仕上げはSanded Swirl Raw Graphiteとなっている。
Eternity RX10のフライ用ブランクにも同様のRaw Graphite仕様があり、RainShadowでは無塗装に近い仕上げを通常の商品仕様として採用している。
一方、Rod Geeksではカラーブランクを販売している。
Rod Geeksの塗装は自動車用グレードで、UV抑制剤とブランクの曲がりに追従するための添加剤を含むと説明されている。現在15色の仕上げが用意されている。
さらにRod GeeksにはNatural MatteとClear Glossがある。
Natural Matteはカーボンの色や模様が見えるためRaw Graphiteのようにも見えるが、メーカー公式FAQでは「matte clear coat」と説明されている。Clear Glossも同様に透明な仕上げで、光沢の有無が異なる。
見た目が黒く、カーボン模様が見えていても、必ずしも無塗装とは限らない。
塗装を剥がして使うビルダーもいる
BassResourceでは2015年に「Rods W/o Clearcoat」というスレッドが立っている。
質問は、購入したロッドの大部分にクリアコートがないのは、軽量化や柔軟性のためなのかというものだった。
これに対し、無塗装ブランクは余計な重量がないため軽く、感度面でも有利になるという意見が出た。
さらに、所有するブランクの塗装を毎回剥がしているというビルダーも登場する。
このビルダーはSt. Croix Big Nastyの塗装を2時間以上かけて除去したことまで書いており、性能差については明確に分からないとしながらも、Raw Graphiteの外観を気に入っていると話している。
別のBassResourceの会話でも、St. Croix SCIVの青い仕上げが気に入らず、約1時間半かけて塗装を除去したという投稿がある。
このスレッドではRaw Graphiteを好む人、マット仕上げを好む人、塗装されたブランクをそのまま使う人が同時に参加している。
海外でも、無塗装が共通の好みになっているわけではない。
「塗装は重量になる」については意見が割れている
塗料を追加すれば、その分だけブランクの重量は増える。
ここまでは単純だが、その重量が実際のロッド性能へどこまで影響するかについては、海外ビルダーの評価が分かれる。
BassResourceでは、Raw Blankを支持するユーザーから、塗料やクリアがないことで重量が減り、振動を減衰させる材料も少なくなるという意見が出ている。
一方、ロッドビルドショップのDelaware Valley Tackleは、現代の良質な仕上げで増える重量は体感できるほど大きくなく、中価格帯のブランクでは外観や製造コストの意味の方が大きいと回答している。
別のロッドビルダーも、塗装済みなら塗装済みのまま、RawならRawのまま使うと回答している。塗装を剥がして削減できる重量より、ロッドのほかの部分で削減できる重量の方が大きいという考えである。
同じスレッド内だけでも、
「何も付けない方が軽く、感度にも有利」
「最近の薄い仕上げなら気にするほどの重量ではない」
という両方の意見が出ている。
塗装はロッドのアクションを変えるのか
この点については、少し整理が必要になる。
BassResourceでブランク性能について頻繁に技術的な投稿を行っているMickDは、塗装程度の重量ではCCSで測るロッドのPowerやActionは変わらないと説明している。
一方で、重量を追加すればブランクの復元速度には理論上影響し、感度へ影響する可能性もあるとしている。影響の大きさはブランクのパワーによっても変わり、強いブランクほど相対的な影響は小さくなるという説明である。
つまり塗装したことで、Fast ActionだったロッドがModerateになるという話ではない。
問題になるとすれば、振った後にブランクが元の位置へ戻る速度や、そこへ加わる重量の方である。
海外の感度に関する議論でも、ブランク重量に対する剛性の比率や、ティップ側へ追加される重量がロッドのレスポンスへ関係するという意見が繰り返し出ている。
North Fork Compositesは表面塗装を使わずに色を付けている
この問題についてメーカー側から明確な説明を出している例が、North Fork CompositesのIconoglassである。
IconoglassにはNaturalだけでなく、Cyan、Green、Gray、Royal Blue、Purpleなど複数の色がある。
しかし、色は完成したブランクの表面へ塗装しているわけではない。
NFCはプリプレグの樹脂へ顔料を混ぜる方法を採用している。
その理由について、表面へ従来型のコーティングを追加する方法よりブランク重量を減らし、アクションをcrispに保てると説明している。仕上げ自体も「Gloss Raw Finish」とされている。
Iconoglassはグラスブランクなので、この説明をそのままカーボンブランク全般へ当てはめることはできない。
ただしNFC自身が、表面コーティングによる重量をブランク設計上の要素として扱っていることは分かる。
色を付けながら表面塗装を増やさないために、樹脂そのものへ顔料を入れている。
塗装をなくすとブランクは傷みやすくなるのか
BassResourceの「Rods W/o Clearcoat」では、Raw Blankは破損しやすくならないのかという質問も出ている。
Delaware Valley Tackleは、カーボン繊維を傷つけるほどの衝撃なら、薄い塗装では大きな保護にならないと回答している。
別のビルダーも、ロッド破損の多くを衝撃による損傷として捉えており、塗装やクリアを除去したロッドを何本か使った経験から、塗装による保護効果を大きく評価していない。
これは海外ビルダーの経験による意見である。
一方、Rod Geeksの塗装にはUV抑制剤が含まれており、メーカーは退色や剥離を防ぐための専用塗料として説明している。
塗装には外観以外の機能も持たせることができる。
ただし、表面塗装があることと、カーボン繊維そのものを衝撃から守れることは別になる。
塗装を剥がすなら、どこまで削ってよいのか
塗装済みブランクをRaw Graphiteへ変更する場合、こちらの方が重要になる。
Rodbuilding.orgの技術資料では、ブランク表面を、
表面のクリア・塗装
↓
ブランクを構成している樹脂層
↓
グラファイトまたはグラス繊維
という構造で説明している。
表面のクリアや塗装を除去しても、ブランクの構造自体を損傷したことにはならない。
しかし、その下にある樹脂層まで削り、カーボンやグラスの繊維を露出させると問題が起きる。Rodbuilding.orgでは、そこまで研磨した状態が破損につながると説明している。
BassResourceでも、塗装を剥がした経験のあるビルダーから、「clothまで削らず、finishだけを取る」という注意が出ている。
再度コーティングする場合についても、スレッド用の厚いエポキシではなく、薄いブランク用コーティングを使う方法が紹介されている。
塗装を剥がしてRawにする作業では、塗装除去より、その下へ入り込まないことの方が重要になる。
Raw Graphiteは見た目でも選ばれている
海外の会話を見ると、Raw Graphiteを選ぶ理由をすべて性能で説明することはできない。
実際には外観を理由にしている投稿がかなりある。
St. Croixの青い塗装を剥がしたビルダーは、Raw Graphiteの方が好きだから作業を行っている。
別のビルダーは、塗装されたブランクならその色を残し、RawならRawのまま使う。顧客にとってブランクカラーは重要なので、わざわざ変更しないとしている。
Rod Geeksについての会話でも、Raw Graphiteが好きな人、Natural Matteが好きな人、RainShadowのTitanium Chromeが好きな人など、好みが分かれている。
無塗装を選ぶ理由には、軽量化と外観の両方がある。
自分で塗装する場合は何を使うのか
Rodbuilding.orgには、ブランクを再塗装する方法についてまとめた技術資料もある。
ここでは、2液または3液式の自動車用クリアコートや、薄いウレタン系コーティングなどが紹介されている。
一方、ガイドスレッドへ使用する通常のロッドフィニッシュ用エポキシを、ブランク全体のコーティングへ使う方法は推奨されていない。厚くなりやすく、滑らかな表面を作りにくいためである。
Rod Geeksが完成時の塗装に自動車用グレードの専用塗料を使用していることからも、ブランク塗装には曲げに追従できる塗膜が必要になる。
単純に好きなスプレー塗料を吹けばよい作業ではない。
結局、塗るか無塗装か
海外には、最初からRaw Graphiteで販売されるブランクもあれば、専用塗料でカラー仕上げされたブランクもある。
ロッドビルダー側でも考え方は分かれている。
Raw Graphiteを好み、塗装済みブランクから塗装まで剥がす人がいる。
塗装による重量を性能上のデメリットとして捉える人もいる。
一方で、現在の薄い塗装による重量差は小さいとして、メーカー仕上げをそのまま使うビルダーもいる。
メーカー側でも考え方は一つではない。
RainShadowにはRaw Graphiteのブランクがあり、Rod Geeksは専用塗料による15色のブランクを販売している。North Fork CompositesのIconoglassは、表面塗装を増やさず、プリプレグの樹脂へ直接顔料を入れて色を作っている。
性能だけを見るなら、ブランクへ何かを追加すれば重量は増える。
ただし、その重量差が実際のロッドでどこまで感じられるかについて、海外ビルダーの評価は一致していない。
そのため実際の選択では、軽量化をどこまで追うか、ブランクの外観をどうしたいか、購入したブランクがどのような表面仕上げになっているかが判断材料になる。
塗装を剥がす場合に明確なのは、表面仕上げだけで止めることである。
その下の樹脂層を削ってカーボン繊維まで露出させれば、軽量化ではなくブランクそのものを傷める作業になる。
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