ロッドビルドでは、ブランクのスパインを探し、そこに合わせてガイドを取り付けるのが正しいと思われがちである。
私もスパイン合わせが正義だと思っていた。
しかし海外のロッドビルド掲示板を見ると、スパインに合わせる派だけでなく、スパインを確認したうえでstraightest axisを優先する派、そもそもスパインを重視しない派も存在する。
つまり海外では、スパイン合わせは唯一の正解ではない。
スパインとstraightest axisは別の基準
スパインとは、ブランクを軽く曲げた状態で回転させたとき、自然に落ち着こうとする方向である。
ブランクは全周が完全に均一な厚みではない。カーボンシートをマンドレルに巻く製法では、材料の重なりや研磨の違いによって、曲がりやすい方向と曲がりにくい方向が生まれる。
このうち、ブランクを曲げたときに最も柔らかく、自然に安定しやすい方向がeffective spineと呼ばれている。Rodbuilding.orgでは、ブランクを曲げたときの外側をeffective spineとしてマーキングする方法が紹介されている。
一方、straightest axisは、ブランクを回転させながら目で確認し、完成したロッドが最もまっすぐに見える向きである。
ロッドブランクには、わずかな反りや曲がりがある。その曲がりを左右方向へ向けてガイドを取り付けると、完成後にガイド列が横へ曲がって見える。そこで曲がりを上または下へ逃がし、ガイド面から見たときに左右へ曲がって見えない向きを選ぶ。
これが実際のロッドビルドで使われるstraightest axisの考え方である。
海外資料ではstiffest axisとstraightest axisがまとめて扱われることも多いが、本来は少し意味が違う。
stiffest axisは、ブランクを曲げたときに最も硬い方向である。straightest axisは、目で見たときに最もまっすぐに見える向きである。
材料が多く重なった方向は硬くなりやすく、同時に比較的まっすぐになることがあるため、実際には両者が近い位置になる場合が多い。しかし、必ず完全に一致するとは限らない。
スパインをどちら側へ置くかでも考え方が違う
スパイン合わせといっても、単純にスパインの上へガイドを取り付けるという一つの方法だけではない。
Rodbuilding.orgでは、次の3通りが選択肢として示されている。
1つ目は、スパインをロッドの上側へ向ける方法。
2つ目は、スパインをロッドの下側へ向ける方法。
3つ目は、スパインを基準にせず、最も硬い軸を魚の荷重に対抗する方向へ向ける方法である。
スパインを上側へ向ける
Rodbuilding.orgでは、スパインを上側へ向けると、前方へのキャストでわずかにパワーを出しやすい一方、フライラインを水面から持ち上げる動作や、魚を持ち上げる方向では少しパワーが低下すると説明している。
ロッドはキャスト時と魚を掛けたときで、必ずしも同じ方向へ曲がるわけではない。
キャストでは、ロッドを後方へ曲げてから前方へ復元させる。魚を掛けた状態では、ラインに引かれてロッドが持続的に曲げられる。
スパインをどちら側へ向けるかによって、曲がりやすい側と曲がりにくい側を、キャストとファイトのどちらへ利用するかが変わるという考え方である。
ただし、Rodbuilding.orgの説明でも差は「少し」とされている。大きくロッド性能が変わるというより、どちらの動作を優先するかという微調整に近い。
スパインを下側へ向ける
スパインを下側へ向ける方法では、前方へのキャストでブランクが自然な曲がり方向へ入りやすく、キャスト時のtrackingが良くなると説明されている。
ここでいうtrackingとは、ロッドが横へぶれず、キャストする面の中で素直に曲がって戻ることを意味する。
また、フライロッドでは水面からラインを持ち上げる方向、一般的なロッドでは魚を持ち上げる方向に、少しパワーを使いやすくなるとされている。
一方、この方法では魚を掛けたときにロッドがねじれるという反論もある。
しかしRodbuilding.orgは、ロッドの安定性を決めるのはスパインの向きではなく、ガイドとラインの位置だとして、この反論を否定している。
スパインを無視して硬い軸を使う
3つ目は、スパインをガイド位置の基準にせず、最も硬い軸が魚の荷重を受けるように組む方法である。
この方法では、ブランクの中で材料が多く、最も曲がりにくい方向をファイト時に利用する。
Rodbuilding.orgでは、魚を持ち上げる力を最も使いやすくなる一方で、キャスト時のtrackingや正確性がわずかに低下する可能性があるとしている。
つまり3つの方法は、どれが正しいかというより、
キャスト時の復元を優先するのか。
キャスト時のtrackingやラインリフトを優先するのか。
魚を持ち上げるときの硬さを優先するのか。
という違いである。
ただし、これらの差が実釣でどこまで体感できるかについては、海外でも意見が分かれている。
海外掲示板では実際に意見が分かれている
海外掲示板では、スパインに合わせるかstraightest axisに合わせるかという質問が繰り返し出ている。
Rodbuilding.orgでは2024年にも、スパインの向きがキャスト距離や正確性に影響するのかという議論が行われている。
スパインを重視するビルダーがいる一方で、モデレーターのTom Kirkmanは、スパインの向きはキャスト距離や正確性には関係せず、ロッドをねじろうとするのはガイドを介して加わるライン荷重だと説明している。
別の参加者は、ガイド位置は見た目など別の基準で決めればよく、スパインを気にする必要はないと結論づけている。
一方で、カスタムロッドをスパイン上に組むことを、完成品ロッドとの差として重視するビルダーもいる。掲示板では、どちらかを一方的に否定するのではなく、両方の考え方を顧客や受講者に説明し、本人に選んでもらうという意見も出ている。
これは、海外でスパイン合わせが完全に否定されたわけではないことを示している。
スパインで組んだらガイドが曲がって見えた
BassResourceでは、スパインに合わせて組んだロッドについて、顧客からガイドが曲がっていると指摘され、作り直したというビルダーの話が出ている。
原因は、スパインとブランクがまっすぐ見える向きが一致していなかったことだった。
スパイン上へ正確にガイドを並べても、その軸自体が左右へ曲がっていれば、完成したロッドをガイド側から見たときに、ガイド列まで横へ逃げて見える。
スパイン合わせとしては間違っていない。
しかし完成品を見た顧客には、ガイドを真っすぐ取り付けられていないロッドに見える。
この経験から、そのビルダーはスパインよりstraightest axisを優先するようになった。
straightest axis派が重視しているのは、単なる外観ではない。リールシート、ガイド、トップガイドまでを一本の直線上へ配置し、完成したロッドとして違和感が出ないことを重視している。
スパインはロッドのねじれを防ぐのか
スパイン合わせを重視する理由として、魚を掛けたときのロッドのねじれを防ぐという説明もある。
しかし海外のstraightest axis派は、この考えにも否定的である。
ロッドを曲げる力は、ラインからガイドを通してブランクへ伝わる。ガイドはブランク表面から離れた位置にラインを保持するため、荷重が掛かるとテコのようにブランクを回転させようとする。
そのため、ガイドがブランクの上側にあるベイトロッドは、強い負荷が掛かるとガイドを下側へ回そうとする。スパインをどちらへ向けても、この力自体はなくならない。
Rodbuilding.orgでは、ロッドを負荷に対して安定させる唯一の方法は、ラインがブランクの下側を通るようにすることだと説明している。
スピニングロッドやフライロッドは、もともとガイドが下側にあるため安定しやすい。ベイトロッドはガイドが上側にあるため不安定であり、スパイラルガイドによってラインを下側へ移すと安定する。
つまり、スパインはブランクの曲がり方に関係する要素ではあるが、ガイドを上側から下側へ回そうとするトルクを止めるものではないという考え方である。
スパインに合わせないとロッドは弱くなるのか
スパインを無視して組むと、ロッドが弱くなったり、破損しやすくなったりするようにも思える。
RodMaker Magazineでは、同じモデル、同じ製造ロットのブランク50本を使い、スパイン側と硬い軸側の破断荷重を比較している。
25本をスパイン側へ荷重が掛かるようにして試験した結果、代表的な破断荷重は22.5ポンドだった。
残り25本を最も硬い軸へ荷重が掛かるように試験した結果は23.7ポンドだった。
差は6%未満だが、硬い軸側の方が高い破断荷重を示している。資料では、スパインを外して組んだロッドの方が早く破損するという考えは誤りであり、試験結果はむしろ逆だったと説明している。
理由は、ブランクの材料が多く重なった側を圧縮側に置くと、より大きな荷重に耐えやすいためである。
ただし、この試験だけでstraightest axisに組んだロッドの方が優れているとは言えない。
実際の釣りでは、キャストもファイトも常に一つの方向だけへ負荷が掛かるわけではない。ロッドを立てたり寝かせたり、魚が左右へ動いたりするため、ブランクはさまざまな方向へ曲げられる。
この試験から確認できるのは、スパインに合わせないロッドが必ず弱くなるわけではないということまでである。
用途によって使い分けるビルダーもいる
スパイン派とstraightest axis派は、完全に二つへ分かれているわけではない。
Mud Holeのビルダーは、ビルド前に必ずスパインを確認しつつ、重量のあるオフショアロッドではスパインを使い、軽いロッドではstraightest axisを使う場合があると説明している。
また、多ピースロッドでは、各セクションのスパイン位置が必ずきれいに一致するとは限らない。
Rodbuilding.orgでは、各セクションのスパインを個別に探してから組み合わせ、フェルールを接続した完成状態でもう一度確認する方法が紹介されている。硬く短いバットセクションではスパインを検出しにくいため、自然な反りを目で確認して近い位置を決める方法も示されている。
一方で、各セクションのstraightest axisを先に確認し、組み合わせた状態で全体が最もまっすぐになるように調整するビルダーもいる。
つまり実際のビルダーは、スパインかstraightest axisかを理論だけで決めているわけではない。
ブランクの曲がり。
スパインの強さ。
ロッドのパワー。
ピース数。
完成後の見え方。
使用時の負荷。
これらを見たうえで、どの軸を優先するかを決めている。
スパイン派も間違いではない
straightest axisを支持する意見があるからといって、スパイン合わせが間違いになったわけではない。
Mud Holeは現在も、スパインを見つけてガイドを配置する方法を基本的なロッドビルド工程として紹介している。スパインに沿って組むことで、キャスト時のロードと復元が安定し、ブランク本来の曲がりを利用できるという立場である。
スパインが強く出ているブランクでは、曲げたときに特定方向へはっきり回ろうとする。
そのようなブランクをスパインから大きく外して組むことに違和感を持つビルダーがいるのも自然である。
一方、スパインが弱く、どの方向でも大きな差が感じられないブランクでは、straightest axisを優先しても実用上の問題は小さいと考えられる。
結局、スパインの影響は、すべてのブランクで同じではない。
結論
海外には、スパインを合わせる派と合わせない派が存在する。
スパイン派は、ブランクが自然に曲がろうとする方向を利用し、キャスト時の復元や曲がりの一貫性を重視する。
straightest axis派は、スパインによる実釣差を小さいと判断し、完成したロッドがまっすぐ見えることや、ガイド列とリールシートが自然に並ぶことを優先する。
さらに、スパインではなく最も硬い軸を魚の荷重に対抗させ、ファイト時のパワーを優先する方法もある。
スパイン合わせが間違いなのではない。
しかし、スパイン合わせだけが正解でもない。
海外ではスパインは絶対に従うルールではなく、ブランクの状態とロッドの用途を見たうえで、採用するかどうかを判断する要素の一つになっている。

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