次に来るブランクス素材は何か
海外ロッドビルドの現場では、「魔法の新素材」より“複合化”が本命になっている
海外のロッドビルド系サイトやメーカー情報を見ていくと、次に来るブランクス素材は、単純に「カーボンの次はこれ」と一言で置き換えられる状況ではありません。
むしろ今の流れは、一つの新素材が全部を塗り替えるというより、高性能繊維・新しい樹脂・新しいメッシュ構造・複合レイアップの組み合わせへ進んでいます。Batson も FAQ で、Rainshadow の多くのシリーズは複数材料の組み合わせで作られており、modulus は rod blank material の一属性にすぎないと説明しています。つまり海外の実務感覚では、すでに「単一素材信仰」から一歩進んでいます。
その前提で見ると、今後の本命候補として目立つのは大きく3つです。
1つ目は T1100G / M40X 系の高性能炭素繊維+高性能樹脂の継続進化。
2つ目は Air Carbon / C6O2 のような新しいメッシュ・バインダー系。
3つ目は フラックス/リネンのような天然繊維系のニッチ拡大です。
逆に、graphene のような言葉は話題性はあるものの、少なくとも海外ロッドビルドの主流実装という意味では、まだそこまで本命には見えていません。
本命その1
T1100G や M40X のような高性能炭素繊維は、まだ伸びる
「次に来る素材」と言うと完全な新物質を想像しがちですが、現実には 既存の高性能炭素繊維の活用がさらに進む可能性が高いです。Toray は T1100G を「world’s highest strength carbon fiber」と位置づけ、高性能樹脂と組み合わせることで従来材比で tensile strength と impact resistance を30%改善し、用途によっては20%の軽量化余地があるとしています。さらに Toray の fishing 向け事例では、APIA や ClearBlue のロッドが T1100G/M40X + NANOALLOY を採用していると明記されています。
ここで重要なのは、T1100G や M40X が「次世代の入り口」ではあっても、単独で完結する素材として語られていないことです。実際には 高性能繊維 + 高性能樹脂 + 積層設計 の文脈で使われています。つまり、次に来るのは「T1100G そのもの」というより、こうした高性能繊維をどうハイブリッドで使うかです。海外で今後広がりやすいのも、この方向です。
本命その2
Air Carbon / C6O2 のような“メッシュ+新技術”系は、かなり新しい流れ
今、海外ロッドビルドの文脈で一番「新しい動き」として見えやすいのは、Air Carbon Mesh / C6O2 周辺です。rodbuilding.org では 2025年末から 2026年春にかけて Air Carbon Mesh 関連スレッドが目立っており、2026年4月時点でもチュートリアルや声明スレッドが継続的に立っています。つまり少なくとも、海外 custom rod building 界隈で「今まさに試されている新技術」の一つです。
NFC の公式商品ページでは C6O2 を “new fiber and a new technology that holds the fiber together” と説明し、Air Carbon を「非常に軽い pure carbon mesh」と「戦略素材扱いの fiber」を組み合わせたものだとしています。さらに NFC は、C6O2 blank が X-Ray 比で 30% lighter かつ 50% stronger だと主張しています。これがどこまで普遍化するかは別として、“メッシュ構造と新しい保持技術で blank を軽く強くする” という発想そのものは、かなり次世代感があります。
つまり Air Carbon / C6O2 は、単なる新しい炭素繊維名というより、構造そのものを変える方向の新素材技術として見たほうが正確です。海外で「次に来る」と言うなら、今いちばん“新しい答え”に近いのはこれです。
本命その3
フラックス/リネン系は主流ではないが、別方向の次世代候補
もう一つ、規模は小さいものの無視できないのが flax / linen 系です。rodbuilding.org では “Flax/Linen rods and blanks” というスレッドが立っており、これは単なる思いつきではなく、blank material の別方向を模索する動きがあることを示しています。今のところ主流化しているとは言えませんが、天然繊維を blank にどう使うかという関心は海外に実在します。
この流れがすぐ大勢になるとは思いません。
ただし、将来的に注目される理由はあります。
それは、フラックス/リネン系が サステナビリティ、振動の質感、従来カーボンとは違うフィーリング で評価される可能性があるからです。少なくとも「軽さと高弾性の頂点」を目指す mainstream の進化とは別に、別の価値軸で選ばれる新素材としては十分あり得ます。現時点では本流ではなく、ニッチな次世代候補です。
逆に、graphene はどうなのか
海外では“話題にはなるが、本命感はまだ薄い”
graphene は一時期かなり注目語として広まりましたが、海外ロッドビルドの現場感では、少なくとも今すぐ blank の主流を塗り替える本命には見えません。rodbuilding.org では graphene に関するスレッドがあり、graphene の定義や “nano-powder” との違いが話題になっていますが、これはむしろ 言葉が先行しやすい素材 であることの表れにも見えます。別スレでも “graphene blank” は理論上のジョークめいた扱いが混じっており、現実の blank material として安定定着している感じは薄いです。
つまり graphene は、マーケティングワードとしては強いですが、少なくとも今の海外ロッドビルド界隈で「次に来る本命」と言うには材料が弱いです。
本当に今、現場で動いているのは、graphene のような概念語より、T1100G/M40X の実装や C6O2 のような具体技術です。
海外の流れをまとめると
「次の素材」は単独素材ではなく、複合技術として来る可能性が高い
Batson の FAQ が示しているように、blank material はすでに「modulus の高い単一繊維を選ぶ」だけでは語れません。多くのシリーズが複数材料の組み合わせで作られており、メーカー側も modulus 単独信仰を否定しています。これはかなり重要です。次の世代でも、この流れはむしろ強まるはずです。
つまり今後の本流は、
- 高性能炭素繊維をどう使うか
- 樹脂をどうするか
- メッシュや binder をどう進化させるか
- どこに別素材を入れるか
という 複合技術競争 になります。
「新素材一発で全部置き換わる」というより、素材の組み合わせと構造設計で差がつく時代に入っていると見たほうが、海外の情報には合っています。
では、どれが一番“次に来る”のか
現時点では Air Carbon 系が最も新しく、T1100G系が最も現実的
かなり率直に言うと、
一番“新しい”のは Air Carbon / C6O2 系です。
rodbuilding.org での話題性も高く、NFC も “new fiber and a new technology” と説明しています。いま実際に「新しいもの」として立ち上がっている感じが strongest です。
一方で、
一番“現実的に広がる”のは T1100G / M40X + 高性能樹脂系だと思われます。
理由は、すでに Toray の fishing 事例で実装が進んでおり、いきなり工法全体を変えなくても性能向上に繋げやすいからです。こちらは革命というより、高級 blank 側からじわじわ降りてくる進化です。
フラックス/リネン系は、
別方向の次世代候補です。
主流 blank 素材の王座を奪うというより、別の釣り味や価値観で一定の支持を取る可能性があります。
まとめ
次に来るのは「次の炭素繊維」ではなく、「次の複合化」
海外ロッドビルドサイトから情報を集めて見えてくるのは、次に来るブランクス素材が単純な一択ではないことです。Batson の FAQ が示すように、blank はすでに複数材料の組み合わせで作る時代に入っており、modulus だけで語る段階ではありません。
その中で、現時点で有力なのは次の3方向です。
T1100G / M40X + 高性能樹脂 は、現実に広がる本命。
Air Carbon / C6O2 は、最も新しい技術候補。
フラックス/リネン系 は、ニッチだが別方向の次世代候補。
graphene は話題性はあるものの、今のところ主流の blank material としては一歩遠いです。
つまり記事としての結論はこうです。
次に来るブランクス素材は、「単独の新素材」ではなく、「高性能繊維・樹脂・メッシュをどう複合化するか」そのものです。
これが、海外ロッドビルドの現場から見た一番実務的な答えです。

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