海外のロッドビルド掲示板では、ロッド製作を副業にした人や、実際に事業として始めた人の経験談がいくつも出ている。
ロッドを作って販売できたという話は珍しくない。
問題になるのは、その後である。
注文が増えても、ロッド1本を作る時間は短くならない。パーツ代だけでなく、送料、客との打ち合わせ、納期、修理や保証対応まで発生する。
実際に事業化した海外ビルダーの話を見ると、「ロッドが売れるか」よりも「自分の作業時間に見合う利益を残せるか」の方が大きな問題になっている。
- 20年間ロッドを作った後に事業化したビルダー
- 1本100ドル利益が出ても数を作れない
- 実際の工賃はどれくらいなのか
- 工賃を安くすると時給が残らない
- 400ドルのカスタムロッドは400ドルの市販品と比較される
- 高級・特殊なロッドでは話が変わる
- 市販品にないロッドならカスタムで作る理由ができる
- ロッドを作れるだけでは客は来ない
- 海外では地元のビルダーが強い
- 長いロッドは送料だけでも利益を削る
- 新規製作より修理の方が副業に向く場合もある
- 修理は市販品との価格競争になりにくい
- 売った後の保証対応も仕事になる
- 米国では税務まで発生する
- 卸価格でパーツを買えるようになっても解決しない
- 「趣味代を回収する副業」という考え方
- 海外で出ている副業の形を整理すると
- まとめ
20年間ロッドを作った後に事業化したビルダー
2024年のRedditでは、「Rod building as more than a hobbie?」という質問が出ている。
回答した一人は、約20年間ロッドビルドを続けた後、正式に事業として販売を始めた経験を持っていた。
最初は友人や、その友人から依頼を受けて製作していたが、その後は州の事業ライセンスを取得し、ロゴの商標も登録している。
注文も入っていた。
チャーター船のキャプテンへ6本単位のロッドを2回販売し、12番のフライロッド、ツナ用のスタンドアップロッド、ULスピニングなど、かなり幅広いロッドを製作していた。
販売そのものには成功していたが、最終的には事業をやめている。
理由として挙げているのが、
- パーツ価格
- ブランクや部品を仕入れる送料
- 完成したロッドを客へ送る送料
- 事業経費
- 税金
- 製作時間
- 納期
だった。
特に大きかったのが、時間当たりで見た収入の低さである。
趣味なら、作りたい日に作ればよい。
注文を受けると、客には釣行予定があり、「この日までに欲しい」という納期が発生する。
注文が増えた結果、好きな時に作る趣味ではなく、作らなければならない仕事へ変わったことも事業をやめた理由として書かれている。
ロッドが売れなかったのではない。
売れるようになった後に、作業時間が問題になっている。
1本100ドル利益が出ても数を作れない
同じ掲示板では、別のユーザーが単純な計算をしている。
ロッド1本で100ドルの利益が残ったとしても、年間10万ドルを得るには1000本必要になる。
副業でそこまでの売上を目指す必要はないが、この話にはロッドビルド特有の問題が出ている。
注文が10倍になれば、作業時間もほぼ10倍になる。
グリップを加工し、リールシートを接着し、ガイドを配置し、スレッドを巻き、エポキシを塗る。
装飾を追加すれば、さらに時間が必要になる。
販売量が増えても、工場製品のように簡単には生産数を増やせない。
実際にカスタムロッドを事業の商品として販売している別の回答者も、カスタムロッドは一定以上にはスケールしにくいと書いている。
ロッドビルドでは、注文数よりも製作できる時間が上限になりやすい。
実際の工賃はどれくらいなのか
2026年8月には、Redditで「安くカスタムロッドを作ってくれる人はいないか」という質問が出ている。
そこで現役ビルダーが自分の工賃を公開している。
一人は、カスタムロッドを正しく1本作るには最低でも4~5時間必要としている。
通常作業は1時間25ドルで計算し、特殊なスレッドワークは別料金。
さらに、自分は安い方で、1時間50ドル程度を取るビルダーもいると書いている。
別のビルダーは、ロッド1本の工賃を最低200ドル、実際には250ドル程度になることが多いとしている。
同じ時期に南カリフォルニアの掲示板でも、ブランクを持ち込んで組んでもらおうとしたユーザーが、複数の業者から250~450ドルの見積もりを受けている。
そこで出た回答の一つが、「10時間掛かる仕事なら、最低賃金で計算してもそれなりの金額になる」というものだった。
カスタムロッドが高くなる理由は、高価なブランクやガイドだけではない。
人が何時間も作業する工賃が入っている。
工賃を安くすると時給が残らない
友人や知人からの依頼では、「材料費に少し上乗せするだけ」で作るケースもある。
しかし、製作に必要な時間は変わらない。
2024年のRedditでは、友人用に装飾まで入れたロッドを作ると、実際の時給が最低賃金以下になるという経験談が出ている。
ロッド1本の工賃100ドルでも高いと感じる客がいるという話もある。
別の事業経験者も、部品代を適正に請求したうえで、1時間20ドル以上の利益を残すのは難しいとしている。
工賃を下げれば注文は受けやすくなる。
その代わり、作れば作るほど自分の時間を安く売ることになる。
工賃を上げれば時給は改善するが、今度は高価格帯の市販ロッドとの比較が始まる。
400ドルのカスタムロッドは400ドルの市販品と比較される
例えば、
ブランクとパーツに200ドル。
工賃に200ドル。
これで販売価格は400ドルになる。
客側には400ドルで買える市販ロッドという別の選択肢もある。
海外の事業経験者からも、大型量販店では個人ビルダーがブランクだけを購入するような価格で完成ロッドが販売されているという話が出ている。
大量生産された完成品と、個人が一つずつパーツを購入して手作業するロッドでは、原価の構造が違う。
そのため、一般的な仕様のロッドを安く作って販売するほど、市販品との価格競争に入りやすい。
高級・特殊なロッドでは話が変わる
一方、実際に利益を出したという話もある。
BassResourceでは、長年ロッドを作っているビルダーが、高価格帯のフライロッドや一部のルアーロッドでは十分な利益を出せたと書いている。
逆に、ほとんど利益が残らないロッドも作っており、その場合は新しい装飾や製作方法を試すための製作として扱っていた。
地域による違いも大きい。
米国東部や南西部のソルトウォーターでは、カスタムロッドを購入する層が比較的大きいという経験談も出ている。
カスタムロッドの市場は一つではない。
バス用の一般的な7ftロッドと、ツナ用のスタンドアップロッド、サーフロッド、フライロッドでは客も価格も違う。
市販品にないロッドならカスタムで作る理由ができる
海外でカスタムロッドを探しているユーザーを見ると、市販品では見つからない仕様を求めている例がある。
例えば、
- 特殊な長さ
- 特殊なグリップ構成
- 市販品には少ないアクション
- 特定のリールに合わせたガイド構成
- 特定の魚種や釣法専用
などである。
短いBFS用グラスロッドを探しているユーザーが、完成品では希望する仕様が見つからず、カスタムビルダーを探している例もある。
一般的なロッドなら市販品と価格比較される。
市販品に存在しないロッドなら、そもそも比較対象が少なくなる。
カスタムロッドを副業として作る場合、この差は大きい。
ロッドを作れるだけでは客は来ない
製作技術があっても、注文が自然に入るわけではない。
2022年には、数年間自分や友人用のロッドを作った後、副業として販売を始めようとしたユーザーが、FacebookグループやMarketplaceへ投稿してもほとんど反応がなかったとして相談している。
完成品を先に作って販売した方がよいのか、注文が来てから製作した方がよいのかという質問だった。
2026年にも、個人ロッドビルダー専用のオンラインマーケットを作れないかという話が出ている。
そこで何度も出ているのが「地元の口コミ」である。
規模を大きくするなら、広告やマーケティングも必要になる。
ロッドをきれいに作れることと、客を集められることは別の仕事になる。
海外では地元のビルダーが強い
カスタムロッドを探しているユーザーに対して、地元のビルダーを探すよう勧める回答も多い。
理由は送料だけではない。
直接、
- グリップの長さ
- リールシート位置
- 使用するリール
- ガイド
- デザイン
を相談できる。
完成後に問題があっても、そのまま持ち込める。
ロッドは長いため、発送にも向いていない。
事業経験者の中には、以前は州外へ発送していたものの、送料の上昇、PVCパイプを使った梱包、配送中の破損などを理由に発送をやめた人もいる。
遠方から来た注文そのものを断るようになった例もある。
副業規模なら、全国へ販売するより地域の釣り人を相手にする方法が使われている。
長いロッドは送料だけでも利益を削る
ロッドは小さな箱では送れない。
ブランクを仕入れる送料が掛かり、完成後には長い筒に入れて客へ送る送料も掛かる。
梱包材も必要になる。
修理でも同じ問題が出る。
BassResourceでは、修理作業自体は40ドル程度でも、往復送料が加わると80ドル近くになる例が紹介されている。
そのため「近くのビルダーへ頼んだ方がよい」という回答になる。
工賃が数十ドルの仕事で数十ドルの送料が発生すれば、遠距離から依頼する意味が小さくなる。
ロッド製作も修理も、地域密着と相性が良い理由の一つである。
新規製作より修理の方が副業に向く場合もある
今回の海外掲示板の調査で、特に面白かったのが修理の話だった。
2016年のBassResourceでは、地域にロッド修理をする人がほとんどいないため、副業としてロッドビルドと修理を始められないかという相談が出ている。
経験者からは、まず実際に何本か作り、それぞれの作業時間を記録して採算を計算するよう勧められている。
さらに、その地域では新しいロッドを作って売るより、修理の方が利益を出せる可能性があるという回答も出ている。
ロッド修理には、
- ガイド交換
- トップガイド交換
- スレッドの巻き直し
- グリップ補修
などがある。
ガイド1個の交換なら、ロッド1本を新しく製作するほどの時間は掛からない。
海外ではガイド1個の交換を10~20ドル程度で受けている例もある。
新規製作とは収益構造が違う。
修理は市販品との価格競争になりにくい
新しいロッドを作る場合、客は市販品を買うこともできる。
修理の場合、客はすでにロッドを持っている。
気に入っているロッドのガイドが壊れた場合、
「新しいロッドを買うか」
ではなく、
「このロッドを直せるか」
という依頼になる。
さらにガイドやトップガイドは繰り返し壊れるため、地域に修理できる人が少なければ継続的な需要も考えられる。
ロッドビルドの技術を副業へ使う場合、完成ロッドの販売だけを見る必要はない。
売った後の保証対応も仕事になる
ロッドを販売すると、完成して渡した後にも仕事が発生することがある。
事業経験者は、販売してから1年ほど経ったロッドが折れ、客が「あなたが作ったロッドだから」と持ち込んでくるケースを挙げている。
無償交換を期待されることもあるという。
ロッドが折れた原因が、
- ブランク不良
- 製作上の問題
- 衝撃
- 使用方法
のどれなのかを確認する必要もある。
ブランクメーカーの保証が使えたとしても、ブランクを交換してロッドを作り直す時間は必要になる。
販売数が増えるほど、過去に販売したロッドへの対応も増える。
米国では税務まで発生する
米国で事業としてロッドを販売しているビルダーの投稿では、
- LLC
- EIN
- 州の売上税
- 四半期の税務処理
- 会計ソフト
- 連邦物品税
といった話まで出ている。
米国では釣竿と一部の関連部品に、製造者・生産者・輸入者を対象とした連邦物品税がある。
これは日本の副業とは制度が違うが、海外掲示板で「ロッド1本いくら儲かった」という計算だけでは事業の利益が分からない理由の一つになっている。
卸価格でパーツを買えるようになっても解決しない
事業化すると、ブランクやガイドを卸価格で購入できる場合がある。
実際に法人化し、複数メーカーの卸アカウントを持っているロッドビルダーもいる。
仕入れ価格を下げられれば、その分利益は増える。
しかし、そのビルダー自身はロッドビルド事業について「良くても損益分岐程度」と評価している。
仕入れが安くなっても、
- ロッドを作る時間
- 客との打ち合わせ
- 発送
- 会計
- 税金
- 保証対応
は残る。
パーツを安く買うだけでは、ロッドビルドの収益性は決まらない。
「趣味代を回収する副業」という考え方
海外掲示板では、ロッドビルドだけで生活することとは別に、
「ロッドビルドに掛かる費用をロッドビルドで回収する」
という話も出ている。
友人や地元の釣り人から依頼を受ける。
部品代と工賃をもらう。
そこで得たお金で次のブランクや工具を買う。
自分の趣味に掛かる費用を減らす。
BassResourceでも、自分のロッドビルドについて「ほぼ自分で費用を賄える趣味」と表現しているビルダーがいる。
副業として考えた場合、年間何百本も作る方法とはかなり違う。
自分が作れる範囲だけ注文を受ければ、納期に追われる量も抑えられる。
海外で出ている副業の形を整理すると
海外掲示板で確認できた話は、大きく次のように分かれる。
| 方法 | 実際に出ている問題・特徴 |
|---|---|
| 一般的なロッドを製作して販売 | 市販品との価格競争が大きい |
| 高級カスタムロッド | 利益を出した実例がある |
| 特殊用途のロッド | 市販品との直接比較が少ない |
| 遠距離販売 | 送料、梱包、破損対応が増える |
| 地域の注文製作 | 口コミ、対面相談、持ち込み対応が使える |
| ロッド修理 | 短時間の仕事があり、市販品との競争も少ない |
| 趣味の延長 | 工具や自分用ロッドの費用を回収しやすい |
ロッドビルドを副業にするといっても、全部同じ商売ではない。
普通のロッドを大量に作って全国へ売る方法と、地域の釣り人から特殊なロッドと修理だけを受ける方法では、必要な時間も経費も違う。
まとめ
海外では、ロッドビルドを副業や事業にした人が実際にいる。
20年間の経験を経て正式に事業化し、チャーター船向けのロッドをまとめて販売するところまで進んだビルダーもいる。
それでも事業をやめている。
問題になったのは、ロッドが売れないことではなく、作業時間に対して利益が残りにくいことだった。
工賃を下げれば時給が下がり、工賃を上げれば高価格帯の市販ロッドと競合する。
遠方へ販売すれば送料と梱包が増え、販売後には保証対応も発生する。
その一方で、高級ロッドや市販品にはない特殊なロッドで利益を出した例もある。
さらに、地域のロッド修理については、新規製作より副業に向く可能性があるという経験者の意見も出ている。
海外掲示板で見えるロッドビルドの副業は、普通のロッドを大量に製作して販売する形だけではない。
地元の口コミで注文を受ける。
市販品にないロッドを作る。
ガイド交換などの修理も行う。
その中から、自分の作業時間に見合う仕事を選ぶ。
海外で実際に続けられている小規模なロッドビルドでは、このような形が出ている。
コメント