カスタムロッドを注文するとき、何をビルダーへ伝えればよいのか。
ブランク、ガイド、リールシート、グリップを自分で指定して、その通りに組んでもらう方法もある。
しかし、今回確認した海外のカスタムロッドショップや掲示板を見ると、それだけではなかった。
対象魚、釣り方、リール、ライン、ルアー重量を伝え、そこからビルダーと仕様を決める。
さらに、使用者の身長や腕の長さを測り、リールシート位置やグリップを体格に合わせるビルダーもいる。
一方で、ガイドサイズや配置などは客が細かく指定せず、ビルダーへ任せるという話も出ている。
海外のカスタムロッド注文を調べると、「好きなパーツを選ぶ」というだけではない注文方法が見えてくる。
- 最初に伝えるのはブランクの型番だけではない
- 実際の注文相談ではかなり細かいパーツ指定も行われている
- リールシート位置を腕の長さに合わせる
- 注文前に実際に仮組みして位置を決める
- 現在も手と腕を測ってロッドを作るビルダーがいる
- 昔のThe Surfcasterは身長だけでなく靴のサイズまで聞いていた
- The Surfcasterは使用者に合わせてブランクまで決めていた
- サーフロッドでは実際に構えてリール位置を決める
- 「ビルダーに実際のキャストを見てもらう」という話まで出ている
- 客が全部決めることには反対意見もある
- Redditでもガイド配置はビルダーに任せるという回答
- 「標準仕様から必要なところだけ変える」カスタムロッドもある
- スレッドカラーは選べても模様はビルダーに任せる
- 分からない項目は空欄でもビルダーと決められる
- 実際に指定されている内容を整理すると
- 何を指定して、何を任せるのか
- まとめ
最初に伝えるのはブランクの型番だけではない
RainShadowブランクを扱うBatson Enterprisesには、プロのロッドビルダーを紹介する「Find a Rod Builder」というページがある。
そこでカスタムロッドを依頼するとき、最初の問い合わせに含める情報として挙げられているのが、
- 希望するロッド長
- アクション
- ライン/ルアーウェイト
- キャスティングかスピニングか
- 対象魚または用途
- 希望するカスタマイズ
である。
その情報を基にビルダーと話を始め、分からない部分についてはビルダー側から質問や提案が行われる。
最初から、
「このブランクに、このリールシートと、このガイドをこの位置へ付けてほしい」
という完成した設計図を客が用意する必要はない。
まず何を釣るのか、何を投げるのか、どのようなロッドが必要なのかを伝え、そこから具体的な仕様へ進んでいく。
実際の注文相談ではかなり細かいパーツ指定も行われている
2021年にはRedditで、そのまま「What do you ask for when commissioning a custom rod?」という質問が出ている。
質問者はクリスマスにDaiwa Saltiga 30を手に入れ、それに合わせるツナ・イエローテール用のカスタムロッドを注文しようとしていた。
すでに注文時点で、
- 8ft
- 20~50lb
- Phenix Black Diamondブランク
- SiCガイド
- ALPSリールシート
まで指定している。
ところがPhenixブランクが入手しにくかったため、ビルダーからSeeker Tac80Lへの変更を提案されている。
そこで質問者は、「高価格でも構わないので、カスタムロッドなら他に何を指定すればよいのか」と掲示板で質問している。
回答では、ブランク、リールシート、ガイドだけでなく、
- バット部分
- アシッドラップにするか
- アシッドラップの方向
- ブランク保護
- スレッドカラー
- フックキーパー
- 装飾
- 文字入れ
など、かなり細かい話まで出ている。
カスタムロッドなので、指定しようと思えばかなり細部まで指定できる。
しかし、この会話の中で特に面白い話が出てくる。
リールシート位置を腕の長さに合わせる
同じRedditの回答で、カスタムロッドの利点として挙げられたのがリールシート位置だった。
あるユーザーはカスタムロッドを1本所有しており、
「腕の長さに合わせてリールシート位置を決められる」
ことを挙げている。
さらに、その人にとってはリールシート位置だけでもカスタムロッドにした価値があったという。
質問者はこれを見て、
「そこは考えていなかった」
と反応し、身長やリールシートを前後どちらへ動かしたのかを質問している。
ブランクやSiCガイドには最初から注目していたのに、ロッドを実際に握る位置については後から気付いている。
カスタムロッドでは、部品のグレードだけでなく、部品をどこに取り付けるかも変更できる。
注文前に実際に仮組みして位置を決める
同じスレッドでは、
「可能ならビルダーと直接会い、リールシート位置とバット長を仮組みして確認した方がよい」
という回答も出ている。
何cmが正解という決め方ではない。
実際にブランクを持ち、リールシートを仮の位置へ置き、ロッドを構えた状態で確認する。
ここまで行けば、市販ロッドのグリップ寸法を選ぶ場合とはかなり違ってくる。
そして、体格に合わせる方法をさらに進めているカスタムビルダーも存在する。
現在も手と腕を測ってロッドを作るビルダーがいる
米国のLakeLady Custom Fishing Rodsでは、現在もカスタムロッドを作る際に手と腕を測っている。
公式サイトでは、ロッド長、アクション、パワーの選定と並んで、カスタムグリップを作るための正確な手・腕の測定を製作工程として紹介している。
測定方法まで公開されている。
人差し指の第2関節から、
- 手首と手の境目まで
- 肘まで
の2か所を測る。
その寸法を使ってグリップを使用者へ合わせ、さらに実際に使用するリールとのバランスも取る。
LakeLadyでは最初の打ち合わせで、
- ロッドの種類
- 対象魚
- 釣り方
などを確認し、その後に素材選定、使用者へのフィッティングへ進む。
注文フォームだけで全仕様を決定して終わるのではなく、フォーム送信後に電話で詳細を詰める方式になっている。
昔のThe Surfcasterは身長だけでなく靴のサイズまで聞いていた
さらに興味深い例がある。
The Surfcasterが2012年に公開していたカタログには、カスタムロッドを注文するときに客から聞く情報がそのまま掲載されている。
同社は、使用者の身体的特徴と釣りの条件へ正確に合わせるためとして、16項目を指定していた。
内容は次の通りである。
- 身長
- 靴のサイズ
- ドレスシャツの袖丈
- 脇から親指先端までの距離
- 使用予定のリール
- 使用予定のライン
- 主に使用する場所
- 使用するルアー重量
- シンカーと餌を合わせた重量
- 希望するバット長
- フルリールシート、プレート式、リールシートなしの選択
- スレッドカラー
- ロッドへの文字入れ
- EVAまたはコルクテープ
- 1ピースまたは2ピース
- ダイヤモンドラップまたは通常巻き
身長や腕の長さだけではなく、靴のサイズまで聞いている。
靴のサイズをどの設計値へ使っていたのかまでは、この資料には書かれていない。
しかし、The Surfcaster自身が「使用者の身体的特徴と釣りの条件へ正確に合わせるため」として、この16項目を要求していたことは確認できる。
The Surfcasterは使用者に合わせてブランクまで決めていた
同じカタログには、さらにカスタムロッドの考え方が書かれている。
The Surfcasterは、それまで25年間に数千本のロッドを作り、数百種類のブランクと多数のガイド構成を試したとしている。
そしてカスタムロッドでは、使用者の身体的特徴や能力も考慮し、
- バット長
- ガイドサイズ
- ロッド全長
- ブランク
- グリップ
- リールシート
- ガイド
- カラー
- 文字入れ
を客と一緒に決めていた。
ここでは、客がブランクを選んでからビルダーへ渡すという順序とも限らない。
使用する場所、リール、ライン、ルアー重量、体格などを聞いたうえで、最終的なブランクまで決定している。
サーフロッドでは実際に構えてリール位置を決める
StripersOnlineでは、カスタムサーフロッドのリールシート位置について具体的な議論がある。
12ft以上のロッドについて、一人のユーザーが説明している方法はかなり直接的である。
まずブランクのバットを胸の中央へ当てる。
そこからロッドを胸の前へ横切るように構え、キャスト時に押し出す側の腕をブランクに沿って伸ばす。
そして親指が来た場所をマークする。
その位置をスプール位置、リールシート中央位置の基準にするという方法である。
つまり、
「12ftのサーフロッドならバットから○cm」
と全員同じ場所へリールシートを付けるのではない。
使用者自身がキャストする姿勢を取って位置を探している。
「ビルダーに実際のキャストを見てもらう」という話まで出ている
同じStripersOnlineの議論では、さらに踏み込んだ意見も出ている。
良いビルダーなら、可能であれば客が実際にキャストしているところを見て、そのスタイルを確認する。
その後、
- ブランク
- リールシート位置
- ガイドの種類
- スレッドカラー
を決める。
さらに可能なら、ガイドをラッピングする前に試投し、ガイド位置やガイド数まで調整するという意見である。
かなり手間が掛かる。
しかし投稿者は、その手間まで含めて「custom」ではないかと話している。
ここまで行くと、カスタムロッドは単なるパーツ変更ではなくなる。
実際のキャストまで設計条件になる。
客が全部決めることには反対意見もある
同じ掲示板では、別のユーザーから違う考えも出ている。
本人が重視しているのは、
「自分がロッドのどこを持つのか」
という部分だった。
自分がどのように釣るか、自分がどこを握りたいかは本人が一番分かっている。
しかし、ブランク上のレイアウトや部品選定については、自分よりビルダーの方が詳しいとして任せている。
そのビルダーは実際に一緒に釣りをする人物で、本人がどのようにキャストし、どのように釣るかまで知っている。
そのため、技術的なレイアウトについてはビルダーに任せるという考えである。
別の投稿でも、実際に10ftのCTSロッドを注文した際、
- リールシート高さ
- グリップの種類
- グリップ幅
- グリップ位置
- 使用リール
- ガイド
- スレッドカラー
は使用者側から伝えたものの、ガイドの具体的なレイアウトはビルダーへ任せたという話が出ている。
客がすべてを設計する必要はない。
Redditでもガイド配置はビルダーに任せるという回答
最初のSaltiga 30用ロッドの話でも、同じ考えが出ている。
回答したロッドビルダーは、ブランクについて、
- 長さ
- パワー
- アクション
- ルアーウェイト
- ラインウェイト
- テーパー
- 素材
- 重量
などを考えるとしている。
リールシートでは素材や形状だけでなく、グリップ全体との組み合わせ、アップロック/ダウンロック、ロックナットや装飾部品まで一緒に考える。
しかしガイドについては、配置とサイズをビルダーへある程度任せた方がよいとしている。
客から伝えるのは予算と、
- 重量
- 耐久性
- 耐食性
などの希望。
その条件からビルダーにガイドを提案してもらう方法である。
カスタムだから全部指定する、という注文方法とは違う。
「標準仕様から必要なところだけ変える」カスタムロッドもある
海外のカスタムショップを見ると、さらに別の注文方法がある。
Nick’s Custom RodsのCTS AIRシリーズでは、モデルごとに標準仕様がすでに決められている。
例えばリールシート位置は、
- AIR 664/666:バットから8in
- AIR 702/704/706:9in
- AIR 708:9.5in
- AIR 709/7010/764/766:10in
- Swimbait 766:11.5in
が標準である。
そして標準位置から変更したい場合だけ、注文フォームへ希望を書く。
ガイドもFuji Alconite Kが標準で、追加料金を払えばTitanium SiCやTorziteへ変更できる。
ガイド構成も標準ではKL20HからKT5.5へつなぐ構成が決められている。
つまり、ゼロから全パーツを客が決める方式ではない。
ビルダーが完成させた標準設計があり、必要な部分だけ変更する。
スレッドカラーは選べても模様はビルダーに任せる
Nick’s Custom Rodsでは、客がメインとなるスレッドカラーとトリムカラーを選べる。
しかし装飾巻きの具体的なパターンについては、その色に合うものをビルダーが考えている。
特別な希望がある場合には、それに合わせるという方式である。
Dilly’s Danglersも近い。
標準仕様として、
- カーボンブランク
- Fujiリールシート
- Fuji Alconiteガイド
- コルクまたはEVAグリップ
を設定している。
客はメインカラーとアクセントカラーを選ぶ。
装飾巻きでは、その色を基に具体的な配色やパターンをビルダーが決め、特別に希望するデザインがある場合だけ指定する。
こちらも「客が全部決める」カスタムではない。
分からない項目は空欄でもビルダーと決められる
Dilly’s Danglersの注文案内には、
「できるだけ詳しくフォームへ書いてほしい」
としながら、分からない部分があれば、用途に合うものを一緒に決めるとも書かれている。
Batsonも同じである。
最初の問い合わせで希望条件を伝え、その後ビルダーから追加質問を受け、分からない部分について提案を受ける。
カスタムロッドの注文には、完成した仕様書を提出する方法だけでなく、ビルダーとの打ち合わせ自体を設計工程に含める方法がある。
実際に指定されている内容を整理すると
今回確認したショップと掲示板で出ていた内容は、大きく4種類に分けられる。
釣りに関する条件
- 対象魚
- 釣法
- 淡水/海水
- 岸/船
- 使用場所
- 使用するルアー
- ルアー重量
- シンカー+餌重量
- ライン
- 使用リール
- キャスト方法
ロッド自体の条件
- スピニング/キャスティング
- 長さ
- パワー
- アクション
- テーパー
- 1ピース/2ピース
- ブランク
- 予算
使用者に合わせる部分
- 身長
- 手のサイズ
- 腕の長さ
- バット長
- リールシート位置
- グリップ位置
- グリップ幅
- グリップ素材
- 使用するリールを付けた状態でのバランス
The Surfcasterでは、これに靴のサイズやシャツの袖丈まで加わっていた。
パーツと外観
- リールシート
- アップロック/ダウンロック
- ガイドの種類
- ガイドのグレード
- アシッドラップ
- EVA/コルク/カーボン
- スレッドカラー
- 装飾巻き
- フックキーパー
- デカール
- 名前などの文字入れ
- ブランクカラー
ただし、このすべてを客が指定しているわけではない。
何を指定して、何を任せるのか
今回確認した海外の注文例では、面白い境界がある。
使用者本人しか分からないものは、かなり細かく伝えている。
どんな場所で釣るのか。
どのリールを使うのか。
何を投げるのか。
どこを握るのか。
どの位置にリールがあると使いやすいのか。
色や見た目をどうしたいのか。
一方、ブランクから性能を引き出すためのガイド配置などは、ビルダーへ任せる例がある。
StripersOnlineでは、「自分が一番分かっているのは、自分がどう釣り、どこを手で持つか」という考えが出ていた。
それ以外のレイアウトは、経験のあるビルダーに任せる。
この役割分担なら、客がロッドビルダーと同じ知識を持っている必要はない。
まとめ
海外のカスタムロッド注文を調べると、指定されている内容はブランクやガイドの型番だけではなかった。
Batsonでは対象魚、用途、長さ、アクション、ライン、ルアー重量などからビルダーとの相談を始めている。
現在のLakeLady Custom Fishing Rodsでは、手首や肘までの距離を測り、使用者の手と腕に合わせてグリップを作っている。
The Surfcasterが2012年に使っていた注文項目では、身長、袖丈、脇から親指までの距離に加え、靴のサイズまで聞いていた。
サーフロッドの掲示板では、実際にブランクを胸へ当ててキャスト姿勢を取り、腕を伸ばしてリールシート位置を決める方法も紹介されている。
さらに、可能ならビルダーが実際のキャストを見て、ラッピング前に試投してガイド位置を調整するという話まで出ている。
その一方で、ガイド配置や細かな部品選定についてはビルダーへ任せるユーザーもいる。
Nick’s Custom Rodsのように、標準となるリールシート位置やガイド構成をあらかじめ用意し、必要な部分だけ変更する注文方式もある。
海外のカスタムロッド注文では、「どのパーツを付けるか」だけを決めているわけではない。
どのように釣るのか。
どのリールを使うのか。
何を投げるのか。
使用者の体格はどうなのか。
どこを握り、どこにリールがあると使いやすいのか。
そこまでを設計条件としてビルダーへ伝える例がある。
そして、その条件をロッドへ落とし込む部分はビルダーへ任せる。
パーツを自由に選べることだけでなく、使用者と釣り方そのものをロッドの設計条件へ入れられることも、カスタムロッドの一つの形になっている。

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