シマノのベイトリールは巻き心地が良い。
ハンドルを回したときにギアの歯を感じにくく、回転が滑らかで、ルアーの抵抗が掛かっても巻き心地が崩れにくい。これはシマノの金属加工技術やギアの精度によるものだと考えられます。

しかし、シマノが公開している技術を見ると、巻き心地はギア単体だけで作られているわけではありません。
通常モデルのメタニウムには、マイクロモジュールギア、X-SHIP、HAGANEボディ、コアソリッドボディが搭載されています。ギアの振動を減らし、そのギアが傾かないように支え、負荷が掛かってもギア同士の位置関係が変わらないようにする。この一連の構造が、シマノの滑らかな巻き心地を作っています。
シマノの巻き心地はギア単体では作られていない
巻き心地が良いリールを作るには、精度の高いギアを入れるだけでは足りません。
ドライブギアとピニオンギアの噛み合いが滑らかでも、負荷によってピニオンギアが傾けば接触位置が変わります。ギアの加工精度が高くても、それを支えるボディがたわめば軸間距離がずれます。
シマノは、巻き心地に関係する構造を大きく三つに分けています。
一つ目が、ギアの噛み合いから発生する振動を減らすマイクロモジュールギア。二つ目が、ピニオンギアを支えるX-SHIP。三つ目が、ギアと軸の位置関係を維持するHAGANEボディとコアソリッドボディです。
シマノの巻き心地は、この三つが揃うことで成立しています。
マイクロモジュールギアが振動を減らす
マイクロモジュールギアは、歯車の歯を細かくし、同じ大きさのギアに多くの歯を配置するシステムです。

通常のギアは、ハンドルを回すたびにドライブギアとピニオンギアの歯が順番に接触します。この接触が大きいほど、ギアの歯が切り替わる感触が振動として手元へ伝わりやすくなります。
シマノのマイクロモジュールギアは、超小型の精密ギアによって噛み合う歯数を増やし、回転時の振動を細かくしています。シマノは従来ギアとの比較で、振動レベルを半分以下に抑えたと説明しています。噛み合う歯数を増やしているため、滑らかさだけでなく強度も確保しています。
ただし、歯を細かくするほど、ドライブギアとピニオンギアの位置精度は重要になります。
シマノ自身も、マイクロモジュールギアを「超小型精密ギアと精巧なボディハウジング」の組み合わせとして説明しています。細歯ギアだけを別のリールへ入れても、軸やボディの精度が足りなければ、同じ巻き心地にはなりません。
X-SHIPと高剛性ボディが噛み合いを守る
マイクロモジュールギアで振動を減らしても、負荷が掛かったときにギアが傾けば、滑らかな噛み合いは維持できません。

X-SHIPは、ドライブギアを大径化し、ドライブギアとピニオンギアの配置を最適化したうえで、ピニオンギアをベアリングで2点支持する構造です。ピニオンギアの傾きを抑えることで、ルアーの抵抗や魚の負荷が掛かった状態でも、軽快なリーリングを維持します。

通常モデルのメタニウムでは、マグネシウム一体成型のコアソリッドボディが採用されています。通常は別部品となるレベルワインドプロテクターとサイドプレートを金属で一体成型し、負荷によるボディのたわみを抑えています。シマノは、この構造によって強い負荷でも安定した巻き心地を実現すると説明しています。
マイクロモジュールギアが振動を減らし、X-SHIPがピニオンギアを支え、コアソリッドボディが全体の位置関係を維持する。
シマノの巻き心地が良い理由は、ギアを高精度に作るだけでなく、その精度が実際の使用中に崩れない構造まで作っていることです。
ダイワは別のギア設計で同じ課題を解決する
ダイワのHYPERDRIVE DIGIGEARは、シマノのマイクロモジュールギアとは異なる考え方で巻き心地を作っています。
ダイワは、ギアの耐久性に関係する歯のモジュールを小さくしていません。歯の大きさを残したまま、歯面の圧力角と形状を変更し、ドライブギアとピニオンギアの噛み合い率を高めています。ダイワは、従来ギアに対して回転ノイズを50%以下へ減らしたと説明しています。
さらにHYPER DOUBLE SUPPORTでピニオンギアの両端を2個のボールベアリングで支持し、HYPER ARMED HOUSINGでは金属フレームによって内部構造を高剛性、高精度で支えています。
シマノは歯を細かくして振動を減らす。ダイワは歯の大きさを維持しながら、歯面形状と噛み合い率を変える。
ギアの設計方法は異なりますが、両社とも、ギアの噛み合い、ピニオンギアの支持、ボディ剛性を一つのシステムとして考えています。
中華リールも巻き心地の構造へ踏み込み始めた
中華リールは、ベアリング数が多いだけで巻き心地を作っていると思われがちです。
しかし現在は、ギアのモジュール、金属フレーム、CNC加工ボディ、ドライブギアの固定、各部品の同軸精度まで訴求する製品が登場しています。
MISURELURE ET ULTRAは細歯ギアを採用
MISURELURE ET ULTRAは、メインギアにモジュール0.35の細歯設計を採用しています。メーカーは、細歯ギアとハードアルマイト処理によって耐久性を確保しながら、ハンドルの巻き感を軽くし、レスポンスを高めたと説明しています。メインフレームには低重心のアルミ合金フレームが使われています。

ET ULTRAは30mm径スプールを搭載する軽量ルアー向けリールなので、34mm径のメタニウムとは用途が異なります。
それでも、単にベアリングを増やすのではなく、ギアのモジュールを小さくして巻き感を改善する方向は、シマノのマイクロモジュールギアと共通しています。
もちろん、モジュールが小さいだけでシマノと同じ巻き心地になるわけではありません。歯面形状、圧力角、加工精度、支持構造、ボディ精度まで揃える必要があります。
DMK PIONEER ELITEはギア加工と金属支持構造まで踏み込む
DMKを国内の汎用ベイトリールと比較するなら、34mm径スプールを搭載するPIONEER ELITEが適しています。
PIONEER ELITEは34mm径スプール、本体重量176g、スプール重量8.83gという仕様で、通常モデルのメタニウムやジリオンSV TWと近いサイズ帯に入ります。
さらにPIONEER ELITEの販促資料では、巻き心地に関係する構造が詳しく説明されています。
メインギアには7075航空アルミ合金を採用し、相手側の小ギアには高性能な硬質銅合金を使用しています。メインギアの歯切りには、浜井産業のHAMAIギアホブ盤と輸入ホブ工具を使用し、リールボディと組み合わせたときの滑らかな作動を実現すると説明しています。

ここで重要なのは、単に7075アルミ製ギアを採用しているだけではないことです。
歯車は材質だけで巻き心地が決まるわけではありません。歯切り加工の精度、歯面の形状、ドライブギアと小ギアの位置関係が重要です。DMKは、使用する歯切り加工機まで巻き心地と耐久性の根拠として説明しています。
PIONEER ELITEでは、支持構造についても具体的な説明があります。
スプールの両端と、大小ギアを支えるメイン側・サイド側のカバー部分へ金属材料を採用し、それらをCNC加工しています。金属製のメインフレームと組み合わせることで、スプールとギアを強固かつ高精度に支持する構造です。
メーカーは、この構造によってリールの揺れやガタを減らし、大小ギアの噛み合いを密にし、ギア歯の保護、巻き心地の滑らかさ、耐久性を向上させると説明しています。

つまりDMK PIONEER ELITEは、金属フレームを採用しただけのリールではありません。
7075アルミ製メインギア、硬質銅合金製の小ギア、HAMAIホブ盤による歯切り加工、スプール両端と駆動部の金属支持、CNC加工されたカバー部品を組み合わせています。
ギアの材質、加工、支持構造、ボディ剛性まで、一つの駆動系として設計している点では、シマノやダイワと比較できる内容になっています。
LOONGZEはCNC加工ボディとDGFXを採用
LOONGZE B101 Air HGは、34mm径スプールとCNC加工されたアルミボディを採用しています。
さらにDGFXと呼ばれるドライブギア固定機構によって、駆動系の耐久性を高め、ノイズを減らしています。LOONGZEは、クラッチ、スプールベアリング構造、DGFXを組み合わせることで、駆動部の安定性を高めていると説明しています。

LOONGZEの考え方は、ギアの歯を細かくするものではありません。
CNC加工によって筐体の精度を高め、ドライブギアの位置を固定し、ギア同士の噛み合いが崩れにくい構造を作っています。
シマノのX-SHIPやコアソリッドボディとは構造が違いますが、高精度なギアを正しい位置で回し続けるという目的は共通しています。
KastKingは部品の同軸精度まで踏み込む
KastKingには複数の上位モデルがありますが、今回はギア形状、5点同軸構造、加工公差、アルミフレームまで、巻き心地に関係する構造を具体的に公開しているAl-Ti Eliteを比較対象にします。
KastKing Al-Ti Eliteは、最適化されたギア、アルミ製メインギア、真鍮製ピニオンギア、アルミフレームに加え、5点同軸構造とミクロン単位の公差管理を採用しています。
5点同軸構造では、ギア側カバー、メインフレーム、スプール固定部、パーミング側カバーなどを同一軸上へ配置し、内部の摩擦と振動を減らしています。KastKingは、負荷が掛かった状態でも滑らかな巻き上げを維持するための構造として説明しています。
これは、巻き心地をギア単体ではなく、部品同士の芯出し精度から改善する考え方です。
KastKingの説明を見る限り、中華リールもすでに「ベアリングが多いから滑らか」という段階を超え、ギア、軸、筐体を一体で設計する領域へ進んでいます。
各社を比較すると巻き心地の正体が見える
今回確認した技術を整理すると、次のようになります。
| メーカー | ギアの噛み合い・加工 | 支持・芯出し | ボディ剛性 |
|---|---|---|---|
| シマノ | マイクロモジュールギア | X-SHIP | HAGANEボディ、コアソリッドボディ |
| ダイワ | HYPERDRIVE DIGIGEAR | HYPER DOUBLE SUPPORT | HYPER ARMED HOUSING |
| MISURELURE | モジュール0.35細歯ギア | 詳細情報なし | アルミ合金メインフレーム |
| DMK | 7075アルミメインギア、硬質銅合金小ギア、HAMAIホブ加工 | スプール両端・大小ギア支持部の金属化、CNC加工 | 金属メインフレーム |
| LOONGZE | 詳細情報なし | DGFX | CNC加工アルミボディ |
| KastKing | 最適化ギア | 5点同軸構造、ミクロン公差 | アルミフレーム |
中華メーカーの技術が一部分だけではなくなっていることが分かります。
MISURELUREは細歯ギア。DMKはギア材質、歯切り加工、金属支持構造。LOONGZEはCNCボディとドライブギア固定。KastKingはギア形状と同軸精度。
それぞれ違う方法で、巻き心地を作る根本部分へ踏み込んでいます。
結論:シマノはギアの振動を減らし、噛み合いを守っている
シマノのベイトリールの巻き心地が良い理由は、単に高精度なギアを使っているからではありません。
マイクロモジュールギアによって、ギアの噛み合いから発生する振動を減らす。X-SHIPによって、負荷が掛かってもピニオンギアが傾かないように支える。HAGANEボディとコアソリッドボディによって、ギア同士の位置関係が変わらないようにする。
シマノは、滑らかなギアを作るだけでなく、そのギアを正しい位置で回し続けるところまで一つの駆動システムとして設計しています。
中華リールにも、細歯ギア、金属フレーム、CNC加工、ギア固定機構、同軸設計を採用する製品が増えました。そのため、現在の中華リールをベアリング数だけで評価することはできません。
それでもシマノの巻き心地が安定している理由は、何か一つの特殊な技術ではなく、ギアの振動を減らす構造と、その噛み合いを守る構造を最初から組み合わせていることにあります。

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